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□※君の名を
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「カナミ」



彼女の名前を呼んだ。


すると、名古屋市役所の広い議場に屈んでいたカナミは、ゆっくり顔をあげて振り返った。



彼女の口からは、ツゥっと赤い血が流れている。



僕はもう少しカナミに近づく。


すると、彼女の腕の中にはもう息をしていない人間の姿があった。


彼女は僕の顔をジッと見てから、不意に口元を上にあげ



『吸血相手に嫉妬しないでよ』


と憎たらしい顔をする。



「してないよ」


『ムッとした顔をしてた』


「…………そりゃ恋人が他の男を抱き締めてていい気はしない」


『死んでるのにねー。……クローリーってほんと可愛いところあるよね』


ふふ、と喜ぶように笑う彼女。

僕はその可愛らしい笑い方が大好きだった。



「いつまでそんなやつ抱き締めてるの?」


『あはは、嫉妬深い恋人だなぁ〜……よっ、と』



カナミは人間を床に置き、僕に抱きついて来た。


それを受け止め、その勢いのまま彼女の唇を奪った。


血の味がする。
さっきカナミが吸っていた男の血だろう。

舌を使って、口の中のその血を全て取り除く。

確かに美味しい血だ。



「………美味しいけど……僕はこっちの方が好みだな」



唇を離し、すかさずカナミの首筋に噛み付いた。


『あ……』


と小さく言葉を漏らしただけで、彼女はそれ以上何も言わなかった。


カナミがさっき吸っていた血を全て吸いきれればいいのに……

なんて思いながら勢いよく吸い上げていると、彼女はやっと抵抗し始めて


『く、クローリー吸い過ぎ!!吸い過ぎ!!』


ばしばしと僕の背中を叩くもんだから、渋々牙を抜いた。


「痛いんだけど」


『クローリーが吸い過ぎだからでしょ!せっかくいっぱい吸って回復しても、すぐクローリーに吸われてまたフラフラになるじゃん』



「男の血を吸わなければいいだろ」


『私は成人の男の血が好きなの!』


「じゃあ僕の血だけを吸えばいい」


『吸血鬼の血じゃ渇きは治らないでしょ』


たしかにそうだ。


だが……


僕はカナミの血だけでも十分満足できるし



やはり愛してる吸血鬼が他の男の血を美味しそうに吸うのはいただけない。






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