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□恋に落ちたら(後編)
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僕はあの時から……


カナミから目が離せなくなっていた。





【数年前】




吸血鬼にされた……



僕にはもう……生きてる意味なんて……




目の前には吸血鬼殲滅部隊。




「死ねぇ!吸血鬼!!」




"吸血鬼"



ちがう…


僕は吸血鬼なんかじゃ……




「っ……うるさい……人間」




軽く剣を振り下ろせば、血しぶきをあげて人間たちは倒れていく。




辛い。



こんなことをするくらいなら……


死んだほうが……



『あんた新入り??』



急に話しかけてきたのは、女の吸血鬼だ。




「……」



僕は無視した。




吸血鬼と馴れ合うつもりはない。



『ちょ……無視?』


腕を掴まれた。



「うるさい。触るな」



僕はその手を振り払い、吸血鬼殲滅部隊に突っ込んでいった。


一人で殺してやる。



吸血鬼なんかと仲間になるわけない。


一人で……



そして最後に残った家族を……




その時、僕の目の前に刀が振り下ろされた。



キィン



咄嗟に受ける。



だが、その次に真横からも、刀が振り下ろされた。


「くっ……」



ブシャッ



腕が切られる。



傷が治らない。



「……っ……」


「お前は終わりだぁぁああ」



飛びかかってくる何人かの人間。



この人数に……一人でなんて無理なのか……?



そう……諦めた時




『はぁ?家畜に終わりとか言われたくないし。お前が死ねよ』



ザクっ……



シュッ……



剣を一振りすれば、僕の近くにいた人間は一瞬で消し飛んだ。



「…………余計なことするな」



『ねぇ、フェリド様のお気に入りなんでしょ?あんた」



「…………は?」


彼女は目をキラキラさせ



『フェリド様よフェリド様!!……あんたを助けたのなんて、フェリド様に気に入られるためだからね」




ポカンとした。



そして



「……趣味悪」



『はぁ!?どこがよ!てか、いつも一人で突っ走るあんたを一応助けてあげたんだからお礼くらい言えば?』


「フェリドに気に入られるためだろ?」


『そうよ!』




全く隠さない、馬鹿みたいな彼女が……

何故か今の僕の気持ちを楽にしてくれた。


「ふ……なんだよそれ」




『ね、仲良くしようよ。形だけでいいよ?フェリド様と仲良くなりたいの』



「それって僕を利用するってこと?」



『そう!第一あんた、吸血鬼と馴れ合うつもりないーって顔してるもの。普通に仲良くなるより、こういう感じの方がいいでしょ?』




彼女はニヤリと笑った。



「名前は?」



『カナミ。あんたは?』




「百夜ミカエラ」




その時僕は、初めて吸血鬼と握手をした。
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