リクエスト企画

□僕に守らせて
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サングィネムのある広場に、大勢の吸血鬼が集まっていた。
そこにいる吸血鬼は、皆同じ格好をしている。

都市防衛隊と呼ばれる部隊に所属している吸血鬼たちだ。

私もその中で、同じ格好をして紛れていた。


「おい、お前新人か?」

私はその声で振り返る。
そこには、自分の上司になるであろう吸血鬼がいた。


『……はい。今日から入ることになりました。奏実です』

「新入り、早く持ち場へつけ。お前はあっちだ」

『はい』


私は指を指された方に早足で向かっていく。
すると、そこには既に二人の吸血鬼がいた。


「何?お前、俺らのチーム?」

そこにいた1人の男の吸血鬼が面倒そうにこちらを見た。


『はい』

「すげぇー弱そうだな」


もう一人の男の吸血鬼もそんなことを言ってくる。
正直、私はフェリド様に第二位始祖の血というものを飲まさせているため、第七位始祖程の力は持っている。
こいつらと戦えば瞬殺だろう。

『……新入りですので……色々と教えてください』


私は軽く会釈をする。


「へぇ…、でも……顔は可愛いな」

「たしかに、他の女の吸血鬼よりも…」


男の一人が、私の顎を掴んできた。そればかりは少しイラっとしてしまい、素早くその男の手を叩いた。


「っ……!」


その素早い動きに驚いたのだろう。目の前の男は目を丸くした。


まずい……目立つ行動をしてはいけないのに……


『す、すみません……』


謝った瞬間、男はハッとして私の胸ぐらを掴んでくる。


「お、お前なぁ……新入りのくせに生意気だな!」


そのまま、建物の壁に強く押さえつけられた。
どうにかしようと思えばどうにかできる。殺そうと思えば殺せるのだが……


『す……すみません……』

「新入りには躾が必要だよなぁ?」


あぁ……新入りイジメというやつだろうか。
仕方ない……少し殴られるくらい我慢しよう。


胸ぐらを掴む力が増し、男が拳を振り上げる。
私はぎゅっと目を瞑った。


その時


「何してるのー?」


気の抜けるような軽い声。
だが、私の大好きな声だ。

ゆっくり目を開けると、胸ぐらを掴んでいた男は目線を声の方に向けていた。


「フェリド様!?!?」


まだ私の胸ぐらは掴んだままだ。
背丈が違うため、どうしても爪先立ちになってしまう。そろそろ離してくれないだろうか……


「……その子がなにかしたのかな?」

フェリド様は私を見てニコリと笑う。

「あ……こ、こいつ新人で……少し生意気なんで躾を……」

それを聞いたフェリド様は小さく笑う。

すると、あっという間だった。

私を掴んでいた男はいつの間にか私の胸ぐらを離していた。
いや、離させられたのだろう。

今度はフェリド様がそいつを壁に押し付けていた。

首を片手で掴み、軽々と持ち上げている。


「あはー……躾かぁ……。それは君のような弱い奴がすることじゃないよ?」

「ぐっ……ふ、フェリド様!?」


フェリド様はぐっと手に力を入れる。すると、男は更に苦しそうな顔をした。


「この子はね、僕の大切な従者なんだよ?虐めないでもらえるかなぁ……」

「じ、じゅう……しゃ……ぐっ……」


私はハッとした。
直ぐにフェリド様に駆け寄る。


『ふ、フェリド様!私は大丈夫です!その人を離してあげてください!』

「えー?僕の大切な従者に意地悪する奴は殺そうと決めてるからねー」


その言葉に、上げられている男は絶望したような顔を見せる。


『い、意地悪だなんて!上司になる方なんで、色々教えてもらっていただけです!…それに、あまり騒ぎを起こしたら……』

「クローリー君に市役所に連れ戻されちゃうね」


フェリド様は納得したように男を地面へぽいっと落とした。


「目障りだ。消えてくれるかな?」


フェリド様の言葉に、男達はビビって走り去って行った。





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