リクエスト企画

□逃げられない愛
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苦しい……
さっきから、ずっと走り続けている。


『はぁ……はぁ……』


でも、絶対に足を止めちゃダメだ。足を止めたら捕まってしまう。また……あいつに……


『っ……』


何かに躓いて、身体が傾く。
ダメだ……転けてしまう……


ズシャッ


『い……たっ……』


ワンピースだったため、その裾に引っかかってしまったのだろう。

転けて、膝に痛みを覚える。でも、ここで止まっちゃダメだ……

早く……


「こんなところにいたのか」


地面についていた手がビクリと震える。その声に、私はすぐに立ち上がり、声とは反対方向に走り出した。

だが、次の瞬間、目の前に何かが下りてきて視界を遮られる。


『ひっ……』


見覚えのある貴族の服。
私はその場に尻餅をついた。


「……悪い、驚かせたか」

目の前の男は私に手を伸ばす。


『いや……触らないで!!』


パァンッ……


伸びてきた手を勢いよく叩いて睨み付ける。
暗闇の中、月明かりで彼の顔がちらりと見えた。


「……外は危ない。足も怪我をしているだろう」


金髪の髪が、月明かりできらきらと反射する。目は赤くて、喋る度にちらりと見える牙。黒い肌を持ち、整った顔立ちのそいつは、私にとっては何よりも恐ろしい男だった。


『放っておいて……あんたの元に行くなら……死んだほうがマシよ!!』


尻餅をついていた私は、立ち上がり逃げようとした。だが、その腕をがっしりと掴まれてしまう。


「もう追いかけっこは終わりだ。帰ってその足の手当をしてやる」


『っ……いやっ!!離して!!離してよっ!!』


腕を強く降っても、決して離してくれない。

怖い……
もう戻りたくない……
いっそのこと……殺して欲しい……


「……気が立ってるようだな。……少し、落ち着け」


そのまま引き寄せられ、首筋に痛みが走った。


『ひっ……やめ……吸わないで……痛い……痛いっ……』


暴れようとすれば、腕で押さえつけられ、そのまま強く血を吸われていく。

じゅるじゅると血の吸われる音が耳元で聞こえる。
苦しくて、気持ち悪くて……
目が霞んでくる。

あぁ……結局今日も逃げられなかった。


今度はいつ、外に出られるだろうか……


『ウルド……やめ……もう……』


ようやく出した声の後、私は意識を手放した。


ドサッ……



「……はぁ……」


ウルドは気を失った彼女を抱き上げる。


「……奏実……早く……私を好きになればいい」


涙で濡れた彼女の頬を撫でる。
吸血鬼になって初めて、美しいと思い、どんな手を使ってでも手に入れたいと思った女。


彼女にどれだけ泣かれたとしても、叫ばれたとしても……


離すつもりはなかった。






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