リクエスト企画
□シンデレラ
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とある街の一角。
そこで暮らしていたのは……
「ちょっと奏実さん!私の部屋を掃除しておいてって言ったじゃないですかー」
『っ!ご、ごめんなさい……シノア姉様』
私は持っていた箒を握りしめぺこりと頭を下げた。
「ちょっと奏実?私に早く夜食を作って」
『あ、真昼姉様……し、暫しお待ちを……』
キッチンへ向かおうと箒を置いて走り出す。
「おい奏実!私にももってこい!」
『み、三葉姉様!は、はい!』
三人の姉に、奏実という娘。この三人は本当の姉ではない。奏実は早くに両親を亡くし、この意地悪な姉が三人いる家へと引き取られたのだ。
「真昼姉様ー、私が作りましょうか?」
「シノアが?それ、食べれるの?」
「あはー、真昼姉様が作るのと一緒のレベルですよー」
「なら食えないな」
「あら、みっちゃん。貴方も同じレベルでしょう?」
この家の三姉妹はとても仲が良い。しかし私だけ、血が繋がってないということで虐められているのだ。
『あ、あの……あと15分ほどしたら出来上がります……』
「遅い。遅すぎる!私の部屋まで持って来なさい」
真昼姉様はツンと顔を背けると、スタスタと部屋へ戻って行ってしまった。
「あ、奏実さん、私の服の洗濯もお願いしますね〜」
シノア姉様もるんるんと自分の部屋へ戻る。
「……おい、奏実。夜食手伝ってやらんこともないぞ」
『……余計時間がかかりそうなので……』
「!?」
私はため息をつきながらキッチンへと向かった。
キッチンのガラスケースに映る自分を見て、思わずため息が出た。
髪はボサボサ、服だってボロボロ…
こんな容姿じゃ、誰にも振り向いてもらえない。
私はこの家で、一生一人で暮らしていくんだと……
『はぁ……虚しい……』
手際よく料理を作り、真昼姉様と三葉姉様に夜食を届けた後は、自分の部屋である屋根裏部屋へ戻る。
そこには、私の唯一のお友達がいた。
「お、奏実が来たぞっ」
「あ、優ちゃん!そんな走ったら……」
私に向かって走ってくるネズミたち。それが、私の唯一の友達だった。
『わ、優っ……』
黒いネズミの優が私に飛びついてくる。
その後ろからゆっくりと歩いてくるのが、金色の毛をもつネズミのミカだ。
そして
『与一と君月もおいで』
手をひらげると、ベットの下から茶色の毛のネズミがおどおど出てきて、その後ろからピンク色で眼鏡の模様が入ったネズミが出てきた。
屋根裏部屋で出会ったこの4匹のネズミたちが、私の唯一のお友達だった。
「奏実!今日も虐められたのか?」
優が私の手の上で心配そうに聞いてきた。このネズミたちとは、何故か意思疎通できる。他の人間には聞こえてないみたいだけど。
『んー…まぁ……ね』
「奏実を虐めるやつなんて俺がぶっとばしてやる!」
「こら優ちゃん。僕らが人間に勝てるわけないでしょーが……」
ミカもよじよじと膝に乗ってくる。
『ふふ、気持ちだけで嬉しいよありがとね』
「僕らがもっと大きければ、奏実ちゃんを助けられるのに……ね、君月君」
「そうだな。……でも、俺らは奏実の味方だ」
与一も君月も私の頬に寄り添ってくる。
お姉様には意地悪されるけれど、私にはこんな可愛い味方がいる。それだけで、幸せだった。
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