ばんがいへん
□吸血鬼と人間
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真横に海が見える道路を一台のクラシックカーが走る。
そこに乗っているのは吸血鬼と……
「で……どこへ向かってるの?フェリド君」
クローリーは、横で鼻歌を歌うフェリドに目をやった。
フェリドは片手で車を運転しながら、小さく口角を上げる。
「ん〜?僕らの仲間たちがいる場所だよ〜」
クローリーはそれを聞き
「君に仲間なんているの?」
少し驚くように笑う。
「え!?少なくとも君は僕の仲間だと思ってたんだけど」
目を開いて笑うフェリドは、さらにクローリーの足の間にちょこんと座る彼女に目線をやり
「それに……かなみちゃんも仲間だよね?」
ニコリと笑いかけた。
『え……えっ……』
「ちょっと……かなみを巻き込まないでよ」
クローリーはかなみの身体をギュッと後ろから抱き締める。そんな姿を見てフェリドは呆れたように笑う。
「じゃあなんで連れてきたの?てか、その乗り方ルール違反だよ?捕まっちゃうよクローリー君」
「誰に捕まるっていうんだよ。……君の運転で、もし事故でも起こったら真っ先に助け出せるようにしてるだけさ」
たしかに、膝の間に座って車に乗るなんて違反だろう。
だが、それを取り締まるような警察はこんな世界にはいない。
ましてや、吸血鬼を法で裁けるわけないのだ。
「まぁ、それはいいとして……クローリー君。どうしてかなみちゃんを連れてきてるわけ?連れは置いてくるように言ったよね?」
「従者は置いてきた」
「かなみちゃんも置いてきてよ」
フェリドはため息をついて笑う。
「かなみを置いて行くくらいなら僕は行かないよ。……かなみとは絶対離れないって決めてる。もし、僕がいないところで襲われでもしたら助けられないじゃないか」
クローリーは、膝の間にいる私の頭を優しく撫でる。
「もー……本当にかなみちゃんは厄介な子だなぁ……殺しちゃおうか!」
その言葉に、かなみはビクッと震える。
「そんなことしたら、僕は君についていかないからね」
「あはー……面倒だなぁほんと」
フェリドは笑ってかなみを見る。
「まぁ……僕も君のことは嫌いじゃないけど……」
「ならいいだろ?……で、どこに向かってるの?」
クローリーは再び質問を戻した。
すると、フェリドはにっと口角を上げ、ハンドルをぎゅっと握る。
「とある漁村。……愛しの優ちゃんミカちゃんの仲間になりに行くのさ」
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