ばんがいへん

□吸血鬼と人間
1ページ/4ページ

真横に海が見える道路を一台のクラシックカーが走る。
そこに乗っているのは吸血鬼と……


「で……どこへ向かってるの?フェリド君」


クローリーは、横で鼻歌を歌うフェリドに目をやった。


フェリドは片手で車を運転しながら、小さく口角を上げる。


「ん〜?僕らの仲間たちがいる場所だよ〜」


クローリーはそれを聞き

「君に仲間なんているの?」

少し驚くように笑う。


「え!?少なくとも君は僕の仲間だと思ってたんだけど」

目を開いて笑うフェリドは、さらにクローリーの足の間にちょこんと座る彼女に目線をやり

「それに……かなみちゃんも仲間だよね?」


ニコリと笑いかけた。

『え……えっ……』


「ちょっと……かなみを巻き込まないでよ」

クローリーはかなみの身体をギュッと後ろから抱き締める。そんな姿を見てフェリドは呆れたように笑う。


「じゃあなんで連れてきたの?てか、その乗り方ルール違反だよ?捕まっちゃうよクローリー君」


「誰に捕まるっていうんだよ。……君の運転で、もし事故でも起こったら真っ先に助け出せるようにしてるだけさ」


たしかに、膝の間に座って車に乗るなんて違反だろう。
だが、それを取り締まるような警察はこんな世界にはいない。
ましてや、吸血鬼を法で裁けるわけないのだ。


「まぁ、それはいいとして……クローリー君。どうしてかなみちゃんを連れてきてるわけ?連れは置いてくるように言ったよね?」

「従者は置いてきた」

「かなみちゃんも置いてきてよ」


フェリドはため息をついて笑う。


「かなみを置いて行くくらいなら僕は行かないよ。……かなみとは絶対離れないって決めてる。もし、僕がいないところで襲われでもしたら助けられないじゃないか」


クローリーは、膝の間にいる私の頭を優しく撫でる。


「もー……本当にかなみちゃんは厄介な子だなぁ……殺しちゃおうか!」

その言葉に、かなみはビクッと震える。


「そんなことしたら、僕は君についていかないからね」

「あはー……面倒だなぁほんと」


フェリドは笑ってかなみを見る。


「まぁ……僕も君のことは嫌いじゃないけど……」

「ならいいだろ?……で、どこに向かってるの?」


クローリーは再び質問を戻した。


すると、フェリドはにっと口角を上げ、ハンドルをぎゅっと握る。


「とある漁村。……愛しの優ちゃんミカちゃんの仲間になりに行くのさ」








.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ