short(旧)

□◎鬼ごっこ(クローリー編)
1ページ/6ページ

「クローリーくーん」



嫌な予感がした。



「何?」


「あれ?なんか機嫌悪い?鬼ごっこしようよ」



フェリド君はまた、意味のわからないことを言ってきた。



「やだよ」


「なんで?」


「走るの嫌い」


「大丈夫大丈夫〜」



何が大丈夫なのか……



そう思ってると



「逃げるのこの子だから」



グイッと


腕を掴み引き寄せたのは



『っ……』




「……人間?」



家畜の服を着た人間だった。



「かなみちゃんって言うんだ。すごく血が美味しくてさ〜……吸血鬼殲滅部隊からくすねてきちゃった」




あたかもまぁ、一つ食べ物を取ってきたような言い方。


そんな言い方に怒りを感じたのか



『あ……私はやらないからな!!』




「耳元でうるさいよ」



フェリド君に腕をあらぬ方向に曲げられ



『あっ……』



目に涙を溜める。



「てか、なんで僕?フェリド君が鬼やればいいじゃん」



僕が鬼で彼女が逃げる。


ではフェリド君は何を?



「僕は傍観者さ」



パッと彼女から手を離す。



痛みに耐えていた彼女がホッとした表情を見せた。



「クローリー君が彼女の血を吸えたら鬼ごっこ終わり」



「捕まえたらじゃないの?」



「捕まえて血を吸ったら。捕まえるだけじゃ簡単でしょ?」



別にどちらも同じだが……


まぁ、ご褒美が付いていると思えばいい。


ここからでも香ってくる彼女の血の香りは、確かにそそられるものがある。




「あ、でも殺さないでね。僕の大事なペットなんだから」


「んー……手加減はするよ」



「あ、あとこの子には、元から持ってた鬼呪装備持たせるから。そう簡単には吸えないよ」



「……面倒くさいなぁ」



何故こんなことをするのかと思ったが……



絶対ただの暇潰しだ。



彼女をチラリと見る




怯えていたが……



“逃げ切ってやる”という強い意志が垣間見れる。




はは……




その希望を潰してやるのは悪くない。



絶望に陥る姿を……


どう足掻いても勝てないと悟る瞬間を……




「……よろしくね。かなみちゃん」



彼女に笑いかけると



『っ……』



ものすごく睨まれるだけだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ