short(旧)

□◎痛み
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『もっと……吸って……ください』



フェリド様の服をギュッと掴む。




「あぁ……いいよ」




フェリド様は口角を上げて、妖麗な笑みで私を見る。




「君の血は美味しいからね……いくらでも吸ってあげよう」





フェリド様の牙が……




牙の痕が無数についている首筋の肌を突き破る。




痛み……




それが……私にとっては快感なのだ。




『あ…………あ…………』





痛みと共に沸き起こるのは、このまま死ねたらどれだけ楽だろうという思い。




この痛みに快楽を感じることは……


私の狂気を指している。




わかっているのだ……




彼、フェリド・バートリーによって、私は吸血の虜となってしまった。




『もっと……もっと……』




いっそ……



私を殺すまで吸い続けて……




そう願っても




「これ以上吸ったら……君は死んじゃうからねぇ」





生き地獄だ。



死ねない……



なのに、こんな人の道から外れたことに快楽を覚えているなんて……




『もっと……吸って……よ』





涙が流れる。



この涙は

吸って……体の血を吸い尽くして……殺して欲しいから流している涙なのか

もっと、もっと吸って……快楽を味わいたいから流している涙なのか




おそらく答えは両者だ。



それほどにまで……


私は狂っているのだ。



「仕方ないなぁ……」


フェリド様は私の手首を掴み



「あと……少しだけだよ?」




手首に牙を突き立てた。




『ふ……あ……』




幸せだ……




牙が私の体を貫き……



私の体に巡る血を……抜き取っていく……




『あは……はは……』




「……壊れた君も……いいねぇ」



フェリド様は口元に垂れる血を舐め




「もっと……壊れてしまえ」




再び……



深く……深く……




牙を突き刺した。





ギュルギュルと先ほどよりも早く血を吸われる。




『あ……フェリド……様……』




吸血の虜になった私には……


幸せこの上ない快感。



血が……抜けていく……




意識が……



無くなっていく……




このまま……





「………………っと……危ない危ない……」




フェリドはようやく、かなみの手首から牙を抜く。



「また、玩具を完全に壊してしまうところだったね」



これで何人目だろう……



でも今回は……



この……かなみだけは……




「あともう少し……僕の玩具でいてほしいかな」




(END)
 

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