short(旧)

□◉狂愛
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喉が渇いた……



人間の……人間の血が飲みたい……




この牢獄に閉じ込められて……



何十年たっただろう?




吸血鬼は日の光なんて見なくても別に身体に害はないし、こんな暗い地下都市の牢獄に閉じ込められたって……




カツンカツンと


今日も彼の足音がする。




頭が狂いそうだ。





「あは〜…今日も生きててよかった〜…」




本当にそう思ってるのか、フェリドは笑いながら牢獄の中に入ってくる。




『血を……人間の血を……』




「ダメダメ。人間の血はあげられない」




優しく撫でられるのと裏腹に、フェリドは残酷だ。



『鬼に……なってしまう……よ?』




「それも困るけど……。君が僕以外の血を……身体に巡らせてると思うと虫酸が走る」




フェリドは自分の肩を私の目の前に晒す




「飲んでいいよ。いっぱいね」



『っ……いら……いらな……』




言葉とは逆に、もう自分の吸血欲求は抑えられない。



『あ……あっ……っ……ぐっ』





鎖で繋がれてる手首を揺らし、彼に近付く。




「おいで……カナミ」





私は思わずフェリドの肩に噛み付いた。



『ぐっ……んっ……んっ……』




「いい子だ……」




その頭を優しく撫でる彼。



悔しい……



私は彼に生かされているのだ。




「君は僕の血を飲んで……僕だけを受け入れて…生きていけばいいんだ」




狂っている。



こんなの……




「愛してるよ……カナミ」





そんなもの……愛とは呼ばない。



でも……この状況をどうにもできない自分の無能さを嘆くしかないのだ。




フェリドの肩から牙を抜くと





「もういいの?……じゃあ……次は僕の番だね」




フェリドは優しく笑って、私の首筋に牙を立てた。
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