short(旧)
□◉取り合い
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「今日はサングィネムへおいでよカナミちゃん」
んー……
どうしようか。
私は腰に手を回され、逃げることを許されない状況からどう逃げるかを考えていた。
少しでも離れようとすれば、たちまち彼に気付かれて力を入れられて余計離れられなくなることはわかっていた。
『……行かないよ?』
「ご馳走もよういしてあるからさ」
『血ならどこでも飲めるよ』
「あ、ふかふかのベッドで一緒に寝よう」
聞いちゃいない。
そんな時……
ガチャ。
扉が開く。
「…………なにしてんの」
入ってきたのは
「あは、クローリー君お久しぶり」
一緒に住んでいるクローリーだ。
クローリーは私たちを見て、すごく嫌そうな顔をする。
今の状況といったら、ただただ私がフェリドに、腰に手を回され引き寄せられている状態。
「…そろそろ離れなよ」
クローリーがイライラした口調で言う。
「えー?でも、カナミちゃんが離れたくないって」
私はビックリして、離れようとするけど
やはりそれを許さないのはフェリドだ。
力を入れても全くビクともしない。
『ち、違うよクローリー?私はなにも……』
「あー……うん。わかってる」
そしてクローリーはこちらへ歩いてきて
ベリッと私たちを引き離した。
「クローリー君は怪力だなぁ」
「そりゃ自分の恋人に悪い虫が付いていたら力込めて取るよね」
「ん?虫?」
フェリドはあは、と笑ってから
「ねぇ、カナミちゃん貸してよ」
「よくこの状況で言えたね」
「え?いい?」
「言ってない。よくない」
すると今度はクローリーが私の腰に手を回し引き寄せた。
「カナミは僕のもの。諦めてくれない?」
その瞬間、私の体の熱が上がっていった。