short(旧)

□◎生かしてあげよう
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「君……弱いねぇ」




『そ……そう?』




ボロボロの身体。



そりゃそうだ。



何故私は一人でこの貴族、クローリー・ユースフォードと戦っているんだ。
馬鹿でしょ……
恨むなら運の悪さを恨め
そういうことなのだろうか



「君……やりそうだと思ったのは僕の思い違いかぁ……」




残念そうな顔して……



あーもう……



ヤケだ!!!!




最後の力で大きく剣を振った。





カンッ





虚しい音だった。




私の剣は宙を舞い、くるくると円を描いて飛んでいく。




やばいなぁ……



これは丸腰すぎるでしょ





「あーあ。もう死ぬしかないねぇ」




ヘラリと笑えば、私の喉元に剣がピトリと当てられる。




「今剣をひいたら…君の血が飛び散るね」



『どうぞご勝手に』



「えー……もっと怖がって命乞いしてもいいんだよー?」




『命乞い?……無駄なことはしない主義だから』



「面白くないなぁ……」




その瞬間、彼は剣をしまう。




『なに?逃がしてくれるの?』



「逃がしはしないよ。家畜になるのに」



ガッと首を持たれ、身体が宙を浮く。



「…少しいい顔になってきたね」




そのまま肩に噛み付く彼。




ガッと牙が刺さる。



『ううっ…』




痛い……痛…




ドサッ




急に手を離され、地面に叩きつけられる。




「ふーん……悪くない」



髪を持たれ、顔をあげれる。




「生かしてあげるよ。…君の美味しい血に免じて」



ニコリと笑う彼の顔が目の前に




殺せれば……どんなに良いだろうか




そんな希望なんて……




「さ、僕の館へ行こうか」




引き寄せられ、彼の腕の中にはいる。




「家畜として生かしてあげよう。……嬉しいだろ?」




頭が痛い……

クラクラする……



きっと……死ぬよりも辛いんだ……


それだけがわかって、私は彼の腕の中で意識を失くした。




「あらら……気を失った?ま、静かでいいや」






生かしてあげよう。




その言葉は決して……


人としては生きられないくせに
 

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