short(旧)

□◎逃がさない
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『ううっ……』




牙が首筋から抜ける。




やっと終わった…





頭がクラクラする。




「君ってほんと美味しいねぇ〜…家畜にしては上質の家畜を手に入れたよ」




手首を掴まれ、再び口元へと運ばれる。





「あー…でもこれ以上飲んだら死んじゃうかなぁ」





クローリー・ユースフォード。



第十三位始祖。貴族だ。





彼の腕の中に入り、私は血を吸われている。




逃げ出したい…




いや……いっそ殺してくれ。




こんなの耐えられない……





毎日毎日、牙が私の肌を貫く。




月鬼ノ組である私が、こんなところでのうのうと生きているわけにもいかない。




だから……




『もっと飲みなさいよ。……私なら全然大丈夫』




余裕な笑顔を作る。



決して余裕なんかないし、力だって入らない。





「えー……じゃあお言葉に甘えて飲もうかな」



手首にガッと牙を刺す。





『っ…………』





意識が遠のく。




これで……



死ねる……






目の前が真っ白になりそうなその時




「はぁ……やはり殺すのは惜しいな」




手首から痛みが消え、ぼんやりと視界が揺れる。





「ここまで美味しい血はやはり生かしておきたいなぁ。……ね、だから今日はここまでにしてあげる」





まだ……続くの?こんな悪夢が……





「あー……もう言葉も発せられないくらい弱っちゃって」





フワリと身体が浮く感覚がして、ベットへと下される。




「んじゃ、回復するまでそこで寝てていいよ〜」




ギシリとベットがきしみ、彼の唇が耳元へ





「君は特別だからね。……ここをかしてあげよう」




カチリと冷たい金属が手首につけられる。




「でもま、逃がさないよ。…逃げられるとは思ってないけど」




逃げることも
死ぬこともできない。
彼に自分の血を差し出すことしかできないのか。




『……殺して……よ』




「んー?…嫌だ」




彼は残酷に笑い、 自分の口から垂れる血をペロリと舐め





「こんな美味しいの……簡単に殺せないよ」




私は彼からずっと





逃げられない。
 

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