僕は君に恋をしたnew
□第1章
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「やぁやぁクローリー君。今日はあまり元気じゃないね?風邪?」
「…………そうかもね」
フェリド君の相手をするのも、今は正直乗り気にならない。それほど、気分が良いものではなかった。
「かなみちゃんと喧嘩でもしたの?」
「喧嘩ってほどじゃないよ。かなみはいつも怒ってるからね」
「あはー……想像できるなぁ」
フェリド君は持っていた資料を整理して、そのまま楽しそうに窓の外に視線を送る。
「まぁ、かなみちゃんは君にメロメロなんだから、心配することないんじゃない?」
「……そうかなぁ」
そこで、フェリドはようやくクローリーの方を驚いた表情で見た。
「え?ここで不安になってるの?あそこまでかなみちゃんを振り向かせようと強気だったのに」
「……いざ僕の方を向いてくれたと思うと、いつまたかなみが僕から離れていくか……不安になる」
「面倒な男だなークローリー君はー……」
呆れたように笑ったフェリドは、そのまま視線をまた窓の外に向ける。
「そんなんじゃ、他の男に取られちゃうよー?」
「他の男?」
「んー……こっちの話。ところで、クローリー君、この資料一緒に整理してくれない?溜まりに溜まってるんだ」
クローリーはフェリドに指差された資料の山を見る。
「え……今日中に返してくれる気はないの?」
「あはー、こんなの5時間あれば終わるよ」
机に置かれた資料の山は、吸血鬼が本気を出したら5時間で終わるほどの量。
「人使い荒すぎ」
「吸血鬼でしょー」
フェリドの言葉にため息をつきながらも、恐らくこれが終わらない限り帰れないのだと悟ったクローリーは、資料の山に手を伸ばした。
「かなみちゃん、いつ吸血鬼にするの?」
フェリド君の問いに、手を動かしながら答える。
「彼女が永遠に僕と生きていきたいって言って縋ってきたら」
「あはー……あのツンツンした彼女がそんなこと言うかなー?」
「言わないかもね」
クローリーは資料をまとめ終わると、また別の資料に手を伸ばす。
「でも……言わせたい。今はまだ、僕の愛の方が大きい気がして嫌なんだ」
「クローリー君は重いからねー」
「あそこまで執着する女は初めてなんだ。重くもなるよ。……逃したくないからね」
もう逃げられる心配はない。そう思っているが、心の奥底ではまだ、懸念材料は残っていた。
彼女が人間である限り、いつ裏切られてしまうか分からない。
そんなことは思いたくないが、こればかりはまだ、不安に感じてしまう部分だ。
「裏切られたら……無理矢理にでも吸血鬼にすればいいか」
「クローリー君こわーい」
「口ばかり動かしてないで手を動かしてよ」
フェリドの持っている資料は全然進んでいない。協力する気がないのだろうか。
「彼女は昔からとても優しいからねー。仲間や友達を放っておけない」
昔、彼女はサングィネムで飼われていた。
そして家族を吸血鬼に殺された。
だから、吸血鬼を良くは思っていない。
それでも僕のことは好きになってくれた。
「彼女の弱い部分が、クローリー君にとってはイライラすることになるかもね」
「……どういうこと?」
「ふふ、時期にわかるんじゃないかな。さ、早く終わらせよう」
フェリドはようやく本気を出し始める。クローリーはため息をつきながらも、資料をまとめるのに専念した。
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