僕は君に恋をしたnew
□第1章
2ページ/7ページ
最近喧嘩が多い。
付き合う前から言い合いをしていたことが多かった私たちだが、付き合ってからというもの、私の性格が影響して、喧嘩をする日々が多くなっていた。
喧嘩といっても、いつも私が怒ってばっかりなのだが…
「……まだ怒ってるの?」
クローリーは小さく笑い、ベットで動けなくなった私の頬を撫でる。
『……そりゃ……動けなくなるまで血を吸われたら誰だって怒るでしょ……』
「君が逃げるから悪いんだよ?走り回るから、僕も余計お腹が空いちゃって……」
私はむすっとしたまま、クローリーから視線を逸らした。
私が人間である限り、クローリーに勝てるわけないし、主導権を握ることはできない。
このままずっと、私はクローリーに勝てないままなのだろうか……
「ねぇ、かなみ、いつ吸血鬼になりたい?」
そんな言葉に、ドキリとしてクローリーを見た。
『……え?』
「僕はまぁ、君が嫌がっても吸血鬼にするつもりだけど、もう嫌がる必要もないだろ?」
クローリーの手が、優しく私の頭を撫でる。
「一緒に永遠に生きていこう」
彼の言葉に、心がキュンとして、堪らなく幸せな気持ちになってしまう。
でも……
『……ま、まだ……吸血鬼になりたいって思うほどクローリーのこと好きじゃないし』
ほらまただ……。
どうしてこう可愛げがないのだろうか。こんなことを言ったところで、クローリーはお見通しなんだろうけど……
「……ふーん。……そうなんだ」
クローリーの返事は、思っていたものと違っていた。
私は恐る恐るクローリーを見る。
すると、彼は私の視線に気付き、困ったように笑いかける。
「まだ……僕の愛の方が大きいみたいだね」
その笑った顔は、少し寂しそうな顔だ。少し胸が締め付けられる。
そんなことないくせに、クローリーのこと大好きなくせに……
どうしてこう、素直になれないのだろうか。
もっと素直に、彼に好きだと伝えられたら……
もっと彼に、愛していると伝えられたら……
そんなことは毎日思っているのだけど、今日も今日とて意地を張ってしまう。
思いが通じ合ってから、クローリーが伝えてくれる"好き"という言葉は、私が伝えるものよりはるかに数が多い。
どうしたら、好きな人に好きって言葉を伝えられるのか。
「あ……かなみ、今日僕、フェリド君に呼ばれてるんだ。いい子でお留守番しててね」
『こんな状態でいい子もないでしょ……』
「ふふ、まぁ、逃げられる心配はないかな」
その言葉に、私はムッとして思わず
『逃げるわけないでしょっ』
少し声を大きくする。
クローリーはそれを聞いて、目を丸くしてから、優しく表情を崩す。
「……帰ってきたら、いっぱい相手してあげるからね」
クローリーの唇が、そっと私の唇に当たる。
触れるだけの、一瞬なキス。
もっとしたいと思ってしまう、愛おしい程甘いキス。
『っ……』
「君が僕にお預けなんてした罰だよ」
『け、結局吸ったじゃん!』
クローリーは、それもそうだねと納得したものの、そのまま部屋を出て行ってしまう。
クローリーはやはり、少し意地悪だ。
私がして欲しいと思うことを、すぐにはしてくれないし……
もっとキスしたいなんて、口にしないと絶対にやってくれない。
それが一番苦手だというのに……
私は動かない身体を布団に潜らせ、大きなため息をついた。
.