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□震える身体(続編)
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目がさめると、そこはソファーの上だった。
自分の部屋だろうか?
いつのまにか眠ってしまったんだろうか?
記憶が曖昧だ。だが、身体の彼方此方が痛い。私は……何をしてたんだろう……
「あ、やっと起きた」
耳に入ったその声で、私の記憶は一瞬で呼び起こされた。
『っ……』
起き上がろうとして、自分が手を後ろで拘束されていることに気づく。
それでも身体だけでなんとか起き上がり、声の主を睨みつけた。
『なんのつもりだ!!吸血鬼!!』
ここを拠点にしている貴族、クローリー・ユースフォードは資料を目に椅子にぎしりともたれかかる。
「別に?君があまりにも弱くて可哀想だったから、家畜にしてあげようかなって」
『殺せ!』
怒鳴りつけた時、床に転がっている仲間の姿を見つける。
『なっ……』
「あー、それ?人質だったんだけど、従者の一人が殺しちゃってね。まぁまだ沢山いるから安心してよ」
私は目を見開く。
なんてことだ……
最悪な展開じゃないか……
私までその人質として……
『……自決しかない……な』
私は口の中にあった錠剤を転がす。もっと早くにこうしていれば、楽になれたのに……
自決はできればしたくなかった。最後まで戦って、それで死ぬなら構わない。でも……私は負けたんだ。こんな状態で生きたところで、グレン中佐や他の仲間に迷惑がかかる。
外にいる人質だって……
殺してしまう方がいいだろう。
でもそれは私の力ではできない。
今私ができること、それは……
自分自身の命を奪うことだ。
「あ……ダメだってば」
そんな声が聞こえた。
それは、先ほどまで少し離れた机にいたはずの吸血鬼。
なのに、いつの間にかソファーまで来ていて、私を押し倒した。
『っ……』
そして口の中に指を入れられる。
「死んじゃダメだよ。君の血は気に入ってるんだ。家畜にする」
『っ……んっ……んーーー!』
思い切り噛み付いたところで、彼の指は私の口内を弄る。
そして、ようやく目的のものにたどり着いたようで、ゆっくりと引き抜かれた。
『ごほっ…ごほっ………くそ……くそ……』
目に涙が溜まる。
自決さえ選べない……
ここまで力の差があるなんて……
「泣いたって逃しても殺してもあげないからね」
彼の笑みは、冷酷なのに楽しそうな笑い。
私の身体はビクリと震えた。
人質のために、月鬼ノ組が駆けつけてこないことを祈ろう。
それを祈ることしか……私にはできなかった。
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