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□君の気持ちを教えて
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物心ついた頃から、私は吸血鬼だった。
周りの吸血鬼たちもほとんどそうだという。
だが、稀に人間だった記憶を持つものもいる。
それでもやはり、下級吸血鬼の記憶は乏しい。何故吸血鬼になったのか……吸血鬼になる前はどんな人生を送っていたのか……
細部まで覚えているものはいなかった。


「カナミちゃんは今日も可愛いね〜。僕と付き合わない?」


目の前に現れたのは、第七位始祖のフェリド・バートリー様だ。
私はすぐに頭を下げ、フードを深く被った。


「もー…カナミちゃん。君はそんなことしなくていいんだって。君は特別なんだ」


被っていたフードを外され、顔を上にあげられる。


「…とても綺麗な顔だ。隠すなんて勿体無い。…君はどこの国の血が入ってるんだろうね。…覚えてないんだっけ?自分のこと」

『……はい……』


フェリド様はいつも私に声をかけてくれる。綺麗だと言っていただける。そして……


「カナミちゃん。僕は君のことがとても好きなんだけど……そろそろ返事をもらえないかなー?」


いつも好きだと、愛していると言われる。

その言葉がどうしても理解できないし、好きや愛といった感情が分からない。

私は彼の言葉にいつも困った表情を浮かべていた。


「フェリド君、またカナミを困らせてるの?」


隣からまた違う吸血鬼が現れる。私は再び腰を深く折ってお辞儀をした。


「あー……だからいいってカナミ」


クローリーはぽんぽんとカナミの頭を撫で、上にあげさせた。


「そうそう、僕ならまだしも、第十三位始祖のクローリー君にはそんな改まらなくていいよ〜」

「……君に言われると腹立つなぁ」


クローリーはため息をついてから、カナミの方を見る。



「まぁでも、ほんとにそんな改まらなくていいから」

『しかし……』

「僕も君が好きだからね。君になら何されても怒れる気がしないよ」


また……"好き"という言葉だ。
私には理解できない、不思議な言葉。きっと、私と同じ下級吸血鬼なら、理解できない感情なのだろう。

血が好きだ。というときに使う好きは分かる。
だが、人に向けて、吸血鬼に向けて、"好き"という感情が、私にはまるで理解できなかった。




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