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□特別な血(続編)
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あの日は
騒がしい夜だった。
決して寝ていたわけじゃない。
その日はたまたま、残っていた資料の内容の整理をしていた。
バタバタと騒がしい音がして、大きな音がして扉が開かれた。


「暮人様!実験体が逃げ出しました!!」

「……何をそんな焦ってる。あいつだけで逃げきれるわけがないだろう。捕まえて監禁しろ。もう二度と逃げ出したくならないように痛めつけてもいい」

「そ、それが……」


柊家に仕えているものは、決して無能なものではない。無能ならまず、柊に仕えることさえできないからだ。
あんな子供に出し抜かれるような奴はここにはいないはずだが…

「真昼様が……実験体を逃がして……」

「真昼が?」

そうなれば話は別だ。
あいつは天才。仕えている者たちが何人かかろうが無理な話だ。


「真昼は今どこにいる」

「ここよ?」


扉にもたれかかり、腕を組んでこちらに笑みを浮かべる女。
柊真昼だった。

「お前がここにいるということは……実験体…かなみは一人だ。今すぐあいつを連れ戻してこ…「私が何の考えもなしにあの子を逃がすわけないじゃない」


嘲笑うかのように顎を少し上げてこちらを見る。

「あの子に逃げる勝算があったから逃がした。…もうあなた達は、あの子を捕まえることはできない」

「何?」

暮人が真昼を睨みつけた時、開いていた扉から勢いよく仕えの奴が入ってくる。

「暮人様!じ、実験体が吸血鬼に連れ去られました!!」


その言葉を聞き、真昼の目も大きく見開かれるのを、暮人は見逃さなかった。


「そこまでがお前のシナリオではないのか」

「……馬鹿言わないで……吸血鬼に売るようなんてこと……」

「あ、連れ去られたというか……実験体が自ら吸血鬼に寄り添っていくようでした……。あの二人は……知り合いのようで……」

「もういい、お前たちは引き続きかなみを探せ。吸血鬼は気まぐれだ。血を吸いきればそこらへんに捨てている場合もある」

「「は、はい!」」


柊家につかえている二人は、自分たちのミスに怯えているのか、顔を真っ青にして出て行った。


「……やるじゃないかなみちゃん。吸血鬼を仲間にしたってことかしら」

「……あと少しで実験が成功したかもしれないというのに……。お前……」

「あれは成功させちゃいけない実験よ。……もう、あの子には干渉しないであげて」

真昼はそう言うと、暮人の部屋から出て行った。

暮人は大きなため息をつき、机にあった資料に目線を移す。

【実験体 大神かなみ。終わりのセラフ。第四ラッパ】


「……必ず……必ず見つけ出してやるさ……」


暮人は手元にある資料をぐしゃりと握り締めた。





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