short(旧)
□◉構って欲しくて
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「……お前は弱い。こうやって上位の始祖に襲われたら何も出来ない」
ようやく唇が離れ、ウルドは不機嫌なままそう言った。
『私が襲われたら、ウルドはすぐに助けに来てくれるでしょ?』
「……」
『ふふ……貴方が私を吸血鬼にしちゃったからこうなったんだよ?面倒なら……私を殺す?』
すると、ウルドは再び私の唇を塞ぐ。
「殺さない」
唇が離れれば、彼はすぐに私にそう答える。わかってる……。そんな中途半端な気持ちで彼が私を吸血鬼にするわけがないって。
「……だが……構って欲しいならもっと別の方法にしろ」
『……えー?』
「レスト・カーを使うな。……他の奴……フェリドとかもダメだ。思わず殺してしまうかもしれない」
『ウルド様こわーい』
くすくす笑うと、彼は私の顎を掴み、軽く上に上げる。
「……お前に惚れなければ……こんな面倒なことにならなかったのにな」
『……残念だね。だからもっと構ってよ』
私はゆっくりと目を瞑る。そうすれば、数秒もたたないうちに、待っていた感触が唇に伝わってくる。
「…カナミ、私が好きか?」
『……ええ、好きよ』
ふわりと笑いかけると、ウルドの機嫌はようやく治る。彼も優しく笑い、ギュっと抱きしめてきた。
『可愛げないって言ってたけど……ウルドも十分可愛い。こんなにヤキモチ妬いてくれるんだもの』
すると、ムッとした顔を浮かべる彼。
「……妬いてない」
『そうゆうところも可愛い』
ウルドの首筋にチュッとキスをすれば、彼はピクリと反応し、微妙な顔で私を見下ろす。
「……上位の始祖を嘗めすぎだ」
『ウルドに私は殺せないからねー』
「……殺せないが……虐めることはできる」
その言葉に、え?と彼を見た瞬間、首筋に彼の牙がズブリと刺さる。
『んっ……』
ギュルルルル……と勢いよく吸われ、一瞬にして身体の血がなくなる。
「……罰として……今日は私の部屋にいろ」
そのままふわりと抱きかかえられ、ボーッと彼の顔を見上げる。
彼に構って欲しくて、いつもこんな風に妬かせてしまう。でも、こうやっていつも構ってくれるから……この遊びはやめられない……
ウルドに抱き上げられ、カナミは小さく笑みをこぼす。
それをウルドは気付いているが、どうにもできないほど、彼女を愛してしまっている。
もし、彼女を捕られそうになれば迷わずそいつを殺すだろうし、奪わせなんてしない。
「…お望み通り構ってやる……覚悟しろ」
ウルドはカナミの額にそっとキスを落とし、小さく笑った。
【END】