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□愛しい彼
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執務室のソファーに座り、クローリーとじゃれ合っていた時のことだ。


コンコン


と執務室の扉が叩かれる。

キスをしようとしていた彼は、ピタリと間近で止まり…


「……嫌な予感がする」


頗る嫌な顔をして扉に目線をやった。



「クローリー君ー!入るよー?」


ガチャッ……


クローリーは私から顔を離したが、肩を引き寄せる。


「あは、いちゃいちゃ中だったのかな?」

「うん。そうだよ?空気を呼んでよフェリド君」

「ふふ、じゃあこれをかなみちゃんに飲ませたら帰るよ」


フェリドは懐から、明らかに危ない液体が入ったガラスの小瓶を取り出した。


『え……』


その液体の色は赤。何かの血?もしかして吸血鬼の?ち、ちょっと待って私はまだ……


「絶対にダメ」

クローリーはギュッとかなみを抱き締めてフェリドを睨みつけた。


「えー?……じゃあクローリー君が飲む?」

「それ……血?」

「ん?あぁ……血ではないよー」

クローリーにとっては血の方が助かるのだが……


「なんだよそれ……」

「危ない薬さ」

「……そんなもの友達に飲ませるのか?」

「あはー、都合いい時だけ友達だなんてー……まぁ、じゃ、かなみちゃんに飲ませるだけだけど」


フェリドはソファーに近付き、かなみに手を伸ばす。クローリーはギュッと力を入れた。


「ふふ、君じゃ守りきれないよー?僕が本気を出したらこれを飲ませることなんて容易なんだからね?」

たしかに……このままかなみを守ることは絶対に無理だ。
なら……やっぱり……


『あ、あの……私飲むよ?クローリー……』

「ダメ。絶対ダメ。君が飲むなら僕が飲むよ」


クローリーはフェリドの手にある小瓶を取り上げた。


「お、いいねー。ぐびーっと飲んじゃって?たぶん死ぬことはないから」


たぶん?



『ちょ、やっぱりダメ!私が飲む!クローリーが死んじゃったら嫌だもん!』

「ダメだってば…これが本当に毒だったら…」

『そんなの尚更!!』

「人間が死ぬ毒で吸血鬼は死なないから大丈夫」

『でもっ……』

「いちゃいちゃしないで早く飲めよ」


フェリドは笑って強めの口調で言う。

う……っと固まり、クローリーはため息をついてから……


「飲まないと帰らないよな……よし、やるか」


小さな小瓶の蓋を開け、ぐびっと一気に飲み干した。





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