request(旧)
□構って欲しくて
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『うぅ……』
何してるんだ私は……
こんなことして……誰かに見つかればヤバいじゃないか……
私はすぐに我に返って、服のボタンに手をかけた。
その時
「もう脱いじゃうの?」
聞こえてくるはずのない声が耳に入る。私の手は一瞬にして凍りつき、そーっと顔を上げて鏡を見た。
鏡には、クローリーの服を着ている私と……さっきまで居なかったはずのクローリーの姿が映っていて……
『へっ!?!?なんで!?!?』
私は振り返り、壁ぎりぎりまで後ろに下がった。
振り向いてクローリーを見ると、彼はなんだか楽しそうにこっちを向いている。
「そういう着方があったんだね。僕より似合ってるんじゃない?」
『……っ……』
私は自分の着ているものを見て、身体中の血が沸騰していく感覚に陥る。
『ちがっ……これは……違うのっ!!』
ボタンを外そうと、私は急いで手を動かす。しかし、あまりに気が動転しているため、ボタンが上手く外れてくれない。
「別にそんな直ぐに脱がなくてもいいよ?」
私がせかせかと動かしていた手を捕まえ、クローリーはニヤリと私に笑いかけた。
『っ……い……いつから……いたの?』
「ん?……んー……かなみが“暇だよー!寂しいよー!"って叫んでたくらいには扉の近くにはいたよ」
!?!?!?
『な、ななななな……』
クローリーは私の顔を見て、笑いを漏らしながら続ける。
「いやー……そうやって叫んでたから、早く行ってあげようと思って扉を少し開けたんだ。そしたら……君がクローゼットの前で何かしているのが見えて……ね」
私はもうクローリーの顔は見れない。真下を向き、耳まで赤くなってるであろう顔をひたすら見られないようにした。
「あはは、ごめんごめん。君がとても可愛いことしてるから、つい見ていたくなっちゃって……」
『……クローリーの馬鹿……』
「えー……」
クローリーは私をあやすように頭を撫でる。
「かなみが不機嫌そうだったからさ、これはもしかして外に出てったりするんじゃないかなーって心配して、貴族会議放ったらかしにして帰ってきたんだよ?」
『っ……』
「あはは……その顔は図星かな?」
クローリーの目が少し怒ったように見える。
『で、出てないよ!?出ようかなーって思っただけで……』
「それがダメなんだって」
クローリーは私の頬をむにっと摘んだ。
『いひゃっ……だ……だってぇ……』
私が泣きそうになると、クローリーは手を離し、そっと抱き締めてきた。
「うん……ごめん。寂しい思いさせてたよね。……僕がかなみをここに連れてきたのに……かなみにこんな思いさせちゃってごめん」
クローリーの言葉に、私はただギュッと彼を抱き締め返した。
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