request(旧)

□構って欲しくて
3ページ/5ページ

『うぅ……』


何してるんだ私は……
こんなことして……誰かに見つかればヤバいじゃないか……


私はすぐに我に返って、服のボタンに手をかけた。

その時


「もう脱いじゃうの?」


聞こえてくるはずのない声が耳に入る。私の手は一瞬にして凍りつき、そーっと顔を上げて鏡を見た。

鏡には、クローリーの服を着ている私と……さっきまで居なかったはずのクローリーの姿が映っていて……


『へっ!?!?なんで!?!?』



私は振り返り、壁ぎりぎりまで後ろに下がった。
振り向いてクローリーを見ると、彼はなんだか楽しそうにこっちを向いている。


「そういう着方があったんだね。僕より似合ってるんじゃない?」

『……っ……』


私は自分の着ているものを見て、身体中の血が沸騰していく感覚に陥る。


『ちがっ……これは……違うのっ!!』

ボタンを外そうと、私は急いで手を動かす。しかし、あまりに気が動転しているため、ボタンが上手く外れてくれない。


「別にそんな直ぐに脱がなくてもいいよ?」


私がせかせかと動かしていた手を捕まえ、クローリーはニヤリと私に笑いかけた。


『っ……い……いつから……いたの?』

「ん?……んー……かなみが“暇だよー!寂しいよー!"って叫んでたくらいには扉の近くにはいたよ」


!?!?!?


『な、ななななな……』


クローリーは私の顔を見て、笑いを漏らしながら続ける。


「いやー……そうやって叫んでたから、早く行ってあげようと思って扉を少し開けたんだ。そしたら……君がクローゼットの前で何かしているのが見えて……ね」


私はもうクローリーの顔は見れない。真下を向き、耳まで赤くなってるであろう顔をひたすら見られないようにした。


「あはは、ごめんごめん。君がとても可愛いことしてるから、つい見ていたくなっちゃって……」

『……クローリーの馬鹿……』

「えー……」


クローリーは私をあやすように頭を撫でる。


「かなみが不機嫌そうだったからさ、これはもしかして外に出てったりするんじゃないかなーって心配して、貴族会議放ったらかしにして帰ってきたんだよ?」


『っ……』


「あはは……その顔は図星かな?」


クローリーの目が少し怒ったように見える。


『で、出てないよ!?出ようかなーって思っただけで……』

「それがダメなんだって」


クローリーは私の頬をむにっと摘んだ。


『いひゃっ……だ……だってぇ……』


私が泣きそうになると、クローリーは手を離し、そっと抱き締めてきた。


「うん……ごめん。寂しい思いさせてたよね。……僕がかなみをここに連れてきたのに……かなみにこんな思いさせちゃってごめん」


クローリーの言葉に、私はただギュッと彼を抱き締め返した。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ