request(旧)
□構って欲しくて
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執務室を開けても、中には誰もいない。貴族会議なわけで、チェスさんやホーンさんもいるわけないのだ。こんな広い市役所でぼっちは悲しすぎる。まぁ、一般吸血鬼は何人もいるのだが…
怖くてあまり近付けない。
『ふぅ…』
ぽふっとソファーに倒れこむ。
それくらいしかすることがないなんて、本当に暇でしかない。
外に出てみようか……なんて思ったけど、後からクローリーに怒られることは目に見えてる。
『暇だよー!寂しいよー!』
大きな声で叫んでみるけど、結局それはもっと自分を虚しくさせるだけだった。
私はソファーでぐるんっと寝返りを打つ。すると、部屋の隅にある大きなクローゼットが目に入った。
『……あれって……』
私はひょいっとソファーから下りて、そのクローゼットに向かう。そして、なんの躊躇もなくぱかっと開いた。
クローゼットの中にあるものは服だ。誰の服か……それは……
私はかかっている大きな服を掴み、クローゼットから取り出す。白い生地のそれは、明らかに貴族が着ている服。そう、クローリーのいつも着ている服だった。
吸血鬼は基本汗はかかないし、毎日服を着替える必要はない。だが、外からの汚れは別だ。戦闘すれば相手の返り血や泥などが服に着くことがあるため、服の着替えは必要である。この服は、その替えの服だろう。
私は、上の服の方をハンガーから取り外し、ギュッとそれを抱き締める。
『はぁ……寂しすぎる……』
こんなことでしか寂しさを紛らわせないなんて……
いや、別に紛れてもいないのだが……
そして、私はふとその服を見て、よからぬことを考えてしまう。
『いやいや……そんな変態みたいなこと……うううう』
私は一度、キョロキョロと周りを確認する。
うん……
誰もいない……
私はそれを確認すると、白いワンピースの上から、クローリーの服を羽織った。そして、前のボタンをとめていく。服の上からでも簡単に着れてしまう程ぶかぶかだ……。そう思いながら、全てのボタンを閉め終わる。
そして、隣にあった全身鏡に映った自分を見て赤面してしまう。
上の服を着ただけなのだが、ワンピースがすっぽり隠れてしまい、下を履いてないように見えてしまう。彼シャツ、というのだろうか……。これってすごくエロいんじゃ……
袖に目を移すと、やはり有り余った袖がダランと垂れている。クローリーの服はこんなにも大きいのか……
そして、袖を鼻の辺りに持っていく。すると、ふわっと微かに、クローリーの匂いがするような気がした。
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