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□はなむけ
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「キャー!ホーン、これ可愛くない!?私絶対これがいい!これ可愛すぎるよーーー!!」

「チェス、うるさいですよ。……私はこっちの方が品があっていいかと思うんですが……」



先ほどから、机に雑誌を広げながら従者の二人がうるさい。

その雑誌は、どうやら外でみつけたものらしいが……


「なにやってるの?ホーン、チェス」


「あ、クローリー様!」


チェスは雑誌から顔を上げ、机に置いていたものを自分の胸の位置まで持ってくる。


「ウェディング雑誌です!やっぱり女の憧れですよね〜ウェディングドレス!」


彼女が持っていた雑誌は、少し汚れてしなっとなっているウェディング雑誌だった。

表紙には、幸せそうな新郎新婦が映っている。まぁ、この大人たちはウィルスで死んでしまったのだろうが。


吸血鬼である彼女たちにとっても、やはり女の憧れである結婚式やウェディングドレスというものには興味を持つのだろうか。


「あー、はしゃいだらお腹すいちゃった!人間探してくるー!」

「こらチェス…。クローリー様、行ってまいりますね」


二人はスクッと立ち上がり、雑誌を机に置いて部屋から出て行ってしまう。


あっという間に、机にはウェディング雑誌だけ残された部屋となってしまった。


やはり興味はあっても血には勝てないということか…


「やれやれ…」


僕は机にほったらかしにされたウェディング雑誌を掴む。

そして、チラッと中を見てみた。

ウェディング雑誌なんて、人間の時にだって見た覚えはない。雑誌の内容は、煌びやかなドレスの特集であったり、会場の説明であったり……


「へぇ……」


ウェディングドレスといっても、様々な形があるようだ。


ウエストの位置が高く、上半身から裾にかけて徐々に広がっていく形のもの。

ウエストでラインの切り替えがあり、スカート部分が裾に向かって大きくふくらんだデザインのもの。

人魚のように、上半身から腰までは身体にぴったりとフィットし、裾へむけての部分は魚の尾びれのように広がっているデザインのもの。


クローリーは頭の中で、そのドレス全てをかなみに試着させていった。





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