ばんがいへん
□手錠
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そして、涙を流していた私とクローリーの目がバチッと合う。
「っ…………なにやってるんだよ」
クローリーはゆっくりとこちらへ歩いてくる。
「僕が泣かしたんじゃないよーミカ君だよー」
フェリドさんは笑ってミカ君を見る。
ミカ君も、自分に責任を感じているのか何も言わない。
「……その手錠はなに?まずそれを外してから話を聞こうか」
クローリーはゆっくりと剣を抜く。
『あ……クローリー待っ……』
クローリーも同じように、剣を振り上げ鎖を切ろうとした。
ちょ……
またあの痛みが……
私はギュッと目を瞑った。
ギィンッ……
だが、先ほどとは違う金属がぶつかる音が響き、私の手首は全く痛みを感じなかった。
恐る恐る目を開けると
「クローリー……待て……そ、そんな力じゃこの鎖は切れない……」
ミカ君が片手で、クローリーの剣を自分の剣で受け止めていた。
たしかに、鎖を切ろうと手加減をしてるクローリーの斬撃なら、ミカ君も片手で受け止められる。
「かなみを泣かせたのは確かに僕だ。だが、それは今みたいに鎖を切ろうとして、その衝撃で彼女を傷付けたからだ。また同じような痛みを与えないで欲しい」
クローリーはハッとして剣を引いた。
「どういうこと?」
フェリドさんは、先ほどの話をクローリーにも話す。
「ってことでー……この鍵が無かったらその二人は永遠に繋がったままだよー」
フェリドさんの手には、銀色の細い鍵が握られていた。
「…………君から鍵を奪うより……ミカエラ君の腕を落としたほうが早いかな」
くるりとこちらを向くクローリー。
『え、えぇっ!?』
「っ……」
「だって、不快だよ。そんな鎖で僕の大事な人が他の男と繋がれてるなんて」
クローリーはゆっくりこちらに近付く。
『ちょ!ダメだって!!ミカ君の腕落としても、私の手首にずっと付いてるなんて嫌だよ!?』
「ちゃんと消滅させてあげるよ」
『そしたらミカ君の腕無くなっちゃうじゃん!!』
私は左手でミカ君を庇う。
『そんなことしたら……クローリー大っ嫌いになるから!』
その言葉に、クローリーはピクリと表情を歪め
「あー……もう、面倒くさい」
フェリドさんの方へ向き直る。
「その鍵、貸して」
クローリーはフェリドさんに手を伸ばした。
その動きはまぁまぁ速かったと思う。
でも、フェリドさんはそんな動きを簡単にひらりと避けてしまう。
「あはは、欲しかったら僕から無理やり奪ってみなよ。……じゃ、ちょっと逃げ回ってくるから、ミカ君はかなみちゃんを好き放題しちゃいなよ〜」
そう言って、フェリドさんは扉から素早く出て行った。
「ちょ……フェリド君!…………くそ」
クローリーはミカ君を睨み付け
「手を出したら殺すから」
フェリドさんを追って部屋から出て行った。
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