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□特別な血
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『はぁ……はぁ……はぁ……』


なんとかギリギリ、時間までに戻ってくることができた。


「あれ?かなみちゃん?」


ふと、顔を上げると……


『あ……深夜さん……』


「どうしたの?そんな慌てて……」


『あ、いえっ……時間内に戻ってこないと……怖いですから』


それだけ言えば、彼には伝わった。

深夜さんは複雑そうな顔をして

「早く……出られたらいいね」


どうにもできない。

そんな顔だった。


『あはは……そうですね』


私は笑って、部屋へと戻る。


期待なんてしていない……

ここから抜け出せたところで、逃げ場なんてない。

日本にいれば、どう足掻いたって柊家の権力には勝てない。


部屋に戻り、ベットに寝転ぶ。


そして、ふと……

気づいた……







『あれ?……ギター……』


そして、先程の唇のことを思い出す。


『っ…………』

思い出せば、体の体温はぐんぐん上がり、私はベットに潜り込んだ。



まてまてまて、まず、ギターは!?

お、置いてきた!?


そ、そういえば、あのクローリーっていう吸血鬼……明日も待ってるって……


ギターを取りに行けば、会ってしまうし、しかも……き、キスした相手!?!?


『最悪!!』



ギターさえ持って帰ってきていたら、もうあんなところに行こうだなんて思わないのに……


しかも、血を吸われた……

普段から実験で血を提供しなければいけないのに、吸血鬼にまで渡してしまえば本当に死んでしまう。

『……バレないようにこっそり……行けるかなぁ?』


コンコン……


部屋の扉がノックされた。


『はい?』


ガチャ……


入ってきたのは……


『あ……シノア……』


シノアは顔を俯かせ、おどおどと部屋に入ってきた。


「……大丈夫……ですか?」


『……うん。元気だよ』


「っ……ごめんなさい。私……私がかなみちゃんと仲良くなったから……」


こんな実験に巻き込まれた。

だが……
遅かれ早かれ私はこうなる運命だったのかもしれない。
私の血は……
何か特別なものを……
持っているのかもしれない。


「必ず……かなみちゃんをここから出します!」


『……ありがとう』



きっと、ここから出られても……私に逃げ場はない。
だから……私はこの場所で……大人しくしておくしかないんだろう。










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