request(旧)

□特別な血
4ページ/18ページ

嫌な気はしなかった。


首筋に鋭い痛みが走った後は、ただ、身体に甘い毒が入っていくように痺れ、ボーッとする感覚。


チューっと高い吸血音が、首元から聞こえる。
時折、頭が真っ白になる程気持ちよくなってしまう。
私は思わず、クローリーの服を掴み、その感覚に耐えた。


不思議だ……

血を抜かれることは、実験で何度もされている。
太い管からギュルギュルと抜かれるあの感覚とは全く違う……
心臓がドキドキして、心の中でもっと吸って欲しい、なんて欲望がでてきてしまう。もっと……もっと……


暫くして、吸血が終わった。

クローリーは首筋から牙を離し、目を丸くして驚く。


「…………なんだ……これ」


クローリーは不思議そうに私を見た。


「君の血は……一体……」


そんな時。

ピピピピピピピピピッ



ポケットからアラームがなる。

急いで海中時計を取り出せば、16時45分。

あと15分で門限だ。


『やばっ……すみません!私もう帰ります!』

パシッ……


気付けば、腕を掴まれていた。

『あ、あのっ……すみませ「……明日もここで待ってるね」


そう言って、クローリーはそのまま引き寄せ


『……え……』


唇が重なる。



腕はパッと離される。

だが、考えている時間はない。

私はとりあえず、無我夢中で柊家の施設に戻った。


その間、身体は熱い……
顔が熱い……


なんなんだ……


私は……何をされた?











「かなみ……かぁ……」


クローリーは空を見上げ、ふぅと一息ついた。

彼女の肌に牙を埋め込んだ瞬間に分かった。他の人間とは全く違う血を持っている。甘く…濃厚で、吸い始めれば止めるのが難しい血だ。

媚薬のように虜になる。
そして、また飲みたくなる…そんな味だ。

「…欲しいな」


クローリーは小さく笑みを浮かべる。

久々に、興味のある人間が現れた。

また明日…
彼女に会えるだろうか……

そう思った時、ふと、自分の横に何か置いてあることに気付く。


「ん……これ……」


先ほど彼女が弾いていた楽器だ。

「……ついてるなぁ」


きっとこれは彼女の大事なものだと、クローリーはなんとなく感じた。

ケースに入れ、そっと木に立てかける。


クローリーはそこで、明日になるまでの時間を潰した。






.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ