request(旧)
□特別な血
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一通り弾き終わった後……
「うまいね」
私は勢いよく顔を上げた。
まずいっ……柊家の人なら……もうここには……
見上げた先には、目の赤い、耳の尖った、赤い髪を持って後ろは三つ編みされている……吸血鬼だった。
『……なんだ………吸血鬼か』
「ホッとした表情できるなんて、君は強いのかな?」
『ま、まさか……戦いの「た」の字も知らない一般市民です』
あはは、と笑うと、吸血鬼は首を傾げる。
「じゃあ……怖くないの?目の前に吸血鬼が現れて」
私はギターを横に置き、吸血鬼をジッと見た。
そして首を振る。
『いいえ……、だって、悪い人に見えないですし……私は、吸血鬼よりも人間の方が強いです。特に柊家……』
目の前にいるこの吸血鬼は、たしかに身体は大きくて、筋肉もあって、戦えば瞬殺されるだろうが……
自分に被害を与えるかといえば、そんな雰囲気はなかった。
「ふーん……隣いい?」
『あ、どうぞ。……名前は?』
「クローリー・ユースフォード」
聞きなれないカタカナの名前に、私は何て呼べばいいのか難しい顔になる。
「クローリーでいいよ」
『あ…はい……』
「君の名前は?」
『かなみです』
「かなみ……」
名前を呼ばれ、なんだか心の奥が熱くなる。
なんだろう……
『あっ……えっと……クローリーはどうしてこんなところに?吸血鬼って、地下都市で暮らしていると聞きましたが……』
「時々地上に出るからね。……今日は……引き寄せられて……」
私はふとギターに目をやる。
『あ…ギターですか?そんな遠くまで聞こえるんですね、これ』
すると、急に顎を掴まれ彼の方を向かされた。
「……いや……君の血に……引き寄せられた」
クローリーの目線が重なる。
彼の鋭い牙がちらりと見える。
『あ……』
何かを言おうとしたが、それは言葉にはならず、首筋にチクリと痛みが走った。
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