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□特別な血
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外に出れる時間は三時間。


14時から17時までと決まっており、その間は柊家の施設内ならばどこへ行ってもよかった。

しかし、17時になれば強制的に部屋へ戻される。
もし、そこで逃げればこの自由時間さえも無くすと言われた。
三時間では、到底家には帰れない。まぁ、帰ったとしても両親が青い顔して私を見るだけだろう。柊家に逆らったと思って、すぐにでも私は戻され、両親は死を選ぶかもしれない。


「かなみ様、時間です。鍵を開けておきますのでご自由に外出ください」



部屋の鍵がカチリと開く音がした。

こんな外出、何の意味もないが……
1日家にいるのは疲れる。外へ出よう。私は、部屋の片隅に置いてあるギターケースを背負って部屋から外へ出た。

その日は晴れていて、空が青くて綺麗だった。

私は音楽が好きだった。
シノアと仲良くなったのも、このギターで演奏していたところに引き寄せられて……だった。

外でギターを弾く、これが私にとって一番の心の癒しなのかもしれない。

『今日はどこで弾こう』

正直、見張りに見られながら弾くのは楽しくない。
17時に帰ってこれば文句は言われないのだから、見張りから死角になるところをいつも探していた。

そんな時……


『ん…?』


塀に穴が開いていた。

柊家の施設は昔からのもので、新しい施設もあるが、もちろん古い施設もある。

この塀は相当年季が入ってるのか……
塀の一部が腐って人1人通れるほどの穴ができていた。

私は辺りを見渡す。

誰もいない。
別に逃げるわけじゃない。
ギターをゆっくり弾ける所を探しているだけだ。
海中時計を開け、時間を確認する。14時半。あと、二時間半は自由だ。

私は背負っていたギターケースを先に穴の中へ押し込み、次にその穴をくぐった。


塀の外にあった世界は……

とても広い草原。
特に何の変哲も無いものだ。

この塀を越えれば少し違った世界が見られるのではないかと思っていたが、そんな甘くはないようだ。

まぁ……ギターを弾くにはいいかもしれない。
とても気持ちが良さそうだ。

私は木陰に腰を下ろし、ギターケースからギターを取り出す。


そして、弦に指を滑らせた。



♪♪♪〜♪♪♪〜

♪♪♪〜♪♪♪〜



何もない草原に、ギターの音色が溶け込んでいくような感覚だった。

塀の外に出ただけで、こんなにも自由に弾ける感覚を手に入れられる。


不思議だった。


私は夢中になって、ギターを奏で続けた。




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