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□溺愛とは
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トントン。



部屋の扉がノックされる音で、私は一気に現実へと引き戻される。





「暮人兄さん?資料の訂正終わったから持ってきたんだけど〜」




声の主は深夜様だ。




私の今の格好と言えば、ソファーで多少暴れたために髪は乱れ…


服は少しはだけている。



いや…なにより上に暮人が覆いかぶさっているのだ。



私は泣きそうな顔になりながら暮人を見上げた。



「……なんだその今すぐ襲ってくださいと言わんばかりの目は」



ブンブンと大きく首を振る。



「暮人兄さん〜?いるんでしょー?開けるよー」



深夜様が入ってきてしまう!?


私は更にブンブンと首を振り涙目で訴えた。


暮人はそれを見て、ほんの少し笑ったかと思うと



「深夜、開けるな」



低い声で扉に向かってそう言った。



「……えー……なんでー」



扉の向こうからそんな声が聞こえる。



「察しろ」


!?


なんてことを言ってるのだ!

もっと他に言い訳が……



「えー……今仕事中でしょー。そういうのはよくないんじゃなーい?」



深夜様は楽しむようにヘラヘラ笑っている。



「黙れ。わかったらさっさと帰れ。……あと、かなみにちょっかいを出すな」



あ……



「え?なんのことー?」


「ふざけるな。俺の恋人に手を出すなと言っている」



「あー……かなみちゃん酷いな〜。言ったら暮人兄さんに怒られるから言わないでって言ったのにー」



その言葉に、暮人は私を見下ろす。


そして、満足そうな笑みを浮かべ



「本当に従順になったな」



手を服の中へと滑らせてくる。



『っ!?ちょ、ダメダメっ……』


「深夜に聞こえるぞ」



ズルい!!


「お前が深夜の言う事を聞かず、俺に隠し事しなかったことを褒めてやる」



服を捲り、少し見えたお腹にキスを落としてきた。



『ひゃっ……!』



思わず声を出してしまい、とっさに唇を噛む。



「深夜、いつまでいる気だ。そろそろ帰らないと…」

「あーわかったわかった!邪魔者は帰りますよ〜」



そう言って、足音は扉から遠くなっていった。




ホッと胸をなでおろし、すぐさま暮人をソファーから突き飛ばした。



「何をする」


『こっちのセリフ!!もう!信じらんない!』


「俺の溺愛ぶりが伝わらないとは悲しいな」



振り回され


恥ずかしい思いをさせられ


"溺愛とは?"




と疑問に持った1日だった。










【END】
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