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□僕だけの君
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幼い頃から、少し大人びた顔立ちで、シノアよりも背は高かった。



「かなみちゃんの方がお姉ちゃんみたいですねー」



そんなことを、よくシノアに言われる。

実際そうだと思う。

第一双子だ。

たまたま私の方が、シノアよりも出口から遠かっただけだろう。


妹なんて響きが嫌で、私はシノアよりもいつも大人びた性格や言動を心掛けていた。


そうしていれば、どんどん……自分の本当の性格が分からなくなっていて……



可愛げのない子供。

何を考えてるかわからなくて気持ち悪い。

シノア様の方がよっぽど可愛い。

なんて周りで言われるようになった。


別に構わない。


私は……


もう自分の本当の性格なんてわからなかった。



まだ幼かった私には、もう……世界の全てを諦めきった感情があった。


別にいつ誰に殺されてもいい。


拷問を受けたって声一つあげない自信がある。


自分から死のうとは思わない。

感情を無にすれば、痛みなんて感じないし、苦しみだってない。



だから……



『シノア。外に出ようよ』



私より背の低い"シノア姉さん"は、訝しげな顔をした。



「何言ってるんですか?外には吸血鬼やヨハネの四騎士がうじゃうじゃいるんですよ?死んじゃいます」


『呪術の勉強はなんのためにしてるの?ヨハネの四騎士くらいならなんとかなるよ』



実際、あんな何も感情を持たない、考えることができない敵を殺すのは難しいことではない。



「じゃあ……前者ならどうです?吸血鬼だったら……」



『吸血鬼だったら話し合いをすればいいんじゃない?』



そう答えれば、シノアは呆れた顔をした。



何故そんな顔をするのだろう。


ヨハネの四騎士のように、全く何も考えられないわけじゃないだろう。


吸血鬼は。


吸血鬼に、自分を殺すと不都合なことが起きるように脅したり、命乞いすることはできるはずだ。



「とにかく、外はダメです。怒られますよ」



『シノア姉さんは真面目だなぁ』



「貴方が子供なんですよ」




その言葉に、少しだけカチンときた。



『……私よりガキなくせに』


「あは〜……まぁそれでいいですけど。……何かあってからじゃ遅いんです。貴方が外へ行こうとするなら無理矢理止めて……」




シノアの言葉は、それ以上は続かなかった。




トンッと軽く、シノアの首の後ろを叩く。



シノアはそのまま、私にもたれかかってくる。




それを優しく受け止め




『シノア姉さんは弱いなぁ』





シノアをベッドに寝かせ、監視の目を欺き部屋の窓から飛び出した。







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