request(旧)
□※救ってあげる
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「…………帰っていい?」
目の前の吸血鬼はそう言った。
私は何も言わず……
ただ床を見つめていた……
こんな冷たい床に、ずっと座り込んでいて、手首にはひんやりとした鎖で繋がれている。
毎日血を吸われる。
家畜だ……
それも……自由の全くきかない……
いっそ死ねたら……どんなに楽だろう……
三つ編みされた、赤い髪をもつ吸血鬼は出て行こうと私に背を向けた。
この吸血鬼を逃せば……
私を殺してくれる奴がいなくなる……
『待って……。行くなら…私を殺してから行ってよ……』
「いや……殺さないし」
吸血鬼は振り返り
「君、フェリド君のお気に入りの玩具なんでしょ?僕が君を殺したら、フェリド君に怒られちゃうよ」
フェリド……
あいつから逃げるためには……
死ぬしかない……
私は一か八か、この吸血鬼を挑発してみた。
『人間一人殺せない吸血鬼?随分お優しい吸血鬼なんだね』
「安っぽい挑発やめなよ」
ダメか……
でも……
『実際そうじゃない。人間一人に執着する吸血鬼と、その吸血鬼に怯えて人間一人殺せない吸血鬼。……吸血鬼ってそんなショボいものなの?』
「………さっきまで死んだ目をしてたのによく喋るね」
『早く殺して見せてよ?その剣は飾り?私を突き刺すこともできないの?』
殺して……
早く……
『ほら……早く殺……』
ガッ……
吸血鬼は、私の頭を掴んだ。
「君の挑発に乗る気はないけど……少しうるさいから……黙らせてあげる」
そして、壁に頭を押し付ける。
『なっ…………』
彼の顔が、私の首筋に近付く。
『やめ……』
「うわ……凄いね。牙痕」
全てフェリドに付けられたものだ。
「ここに僕のものを付けてもバレないよね」
その言葉に、私は目を見開く。
『やめろっ!!』
暴れようとしたけど、がっちりと掴まれた頭はビクともしない。
「君がうるさくしたのが悪い」
そんな声が、耳元で聞こえた。