request(旧)
□※救ってあげる
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少し重い扉を、片手で開ける。
ギィィィ……
そこは真っ暗で、少し進むと……
小さな明かりが見えた。
こんな暗い部屋に、明かりは小さなランプ一つだ。
そして、その壁に…
両手を鎖で繋がれている人間がいた。
その人間の目は虚ろで、ただ床を見つめていた。
コツ…コツ……
僕はその人間に近付く。
すると、人間はゆっくり顔を上げた。
そして……
僕を見た瞬間、少しだけ目の中に色が戻った気がした。
『っ…………せ……』
「……なに?」
『……吸血鬼っ……私を……殺せ!!』
彼女はそう叫んだ。
「んー……それはちょっと無理かなぁ……」
『もう……耐えられない……殺して……お願い……じゃないと……あいつが………「あはーーー、僕のこと呼んだ?かなみちゃん」
彼女の声を、僕の後ろから掻き消したのは……
「フェリド君か…」
彼の方を見れば、僕の方なんて目もくれず、壁に繋がれた人間の方へ楽しそうに歩いていく。
「どう?僕のお気に入りの玩具なんだ」
そう楽しそうに、彼女の頭を掴んだ。
『はな……離せ……やめ……』
そして……
分かっていたが……
フェリド君は彼女の首にガブリと噛み付いた。
『あっ……っ……くっ……』
悔しそうに顔を歪める。
でも、しばらくすれば……
諦めたように……遠くを見た。
「……はぁ……今日の血も……とても美味しいよかなみちゃん」
牙を抜いて、彼女の頭を撫でるフェリド君。
彼女の目は、また虚ろな目に戻っていた。
諦めきった……
そんな表情だ。
「君の吸血行為を見せるためにわざわざ僕を呼んだの?」
「あれ?クローリー君呼んだっけ?」
「呼んだよ。……てか、この牢屋に面白いものがあるから見て来なよって言ったのもフェリド君だよ?」
「あは……そうだっけ?」
彼のいい加減な態度は今に始まったことじゃない。
別にイライラもしないし、あぁまたいつもの感じかと思うだけだった。
「彼女と話した?」
「うん、少しだけね」
「へー……じゃあ、彼女の話し相手になってあげてよ」
「……ん?」
さすがに意味が分からなくて、そんな声が出る。
「僕だと、全然話してくれなくてさ、この子」
「そりゃ……嫌われてるからじゃない?」
「あは〜……言うねぇ。……じゃ、クローリー君よろしくね。これから僕はちょいと東京に用があるから」
そんなことを言って……
僕をこの部屋に置いて、行ってしまった。