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□狂った愛の先
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『もう…………殺して……』




涙は乾ききった。


ただ……消えそうな、か細い声が私の口から漏れる。



「はは……殺す?そんなことするわけないだろ」




目の前にいる吸血鬼は、私の顎を掴む。



「逃がすものか……やっと……手に入れたのに……」



チャリ……




はめられた鉄の首輪には、吸血部分から流れ落ちた血が固まり、こびり付いている。



両手首も鎖で繋がれ……



逃げることなんてできない。



私は……


グッと口に力を込める。




舌を噛み切って死んでやろうと




「だから……バレバレだってー」




吸血鬼に唇を重ねられる。



そして、無理矢理に舌をねじ込み……


私が舌を噛み切るのを阻止した。



『っ…………っ……』



ドンドンと彼の体を叩けば



チャリ……チャリ……



と鎖の音が響く。



「……あはは、苦しかった?君が僕から逃げようとするからだよ」




悪夢だ……




何度も舌を噛み切ろうとしても……


阻止される。




「君が口に力を入れるのがすぐに分かるからね。……僕の速さで君の行動を止めることなんて簡単なことだ」



『どうして……どうしてこんなこと……』




私を監禁しているのは……


クローリー・ユースフォード。



吸血鬼の貴族だ。



「だから何度も言ってるじゃないか……」



クローリーは、私の首筋にツゥっと牙を滑らせる。



「君を…………愛しているからだよ」




プシュ……




あぁ……


また……


吸血されている……




この部屋にクローリーがいない時に、死んでやろうと思ったことは何度もあったが……



そんな考えはお見通しなのか……



彼は部屋を出る前にいつも私の血を吸って…………気を失わせる。



起きればいつも、彼がいて


彼がいない時は…起きていることさえできないのだ。



どうして私が……



こんな悪夢を見せられているのか……





首筋から勢いよく吸われていく血。



どんどんと意識が遠のく。



『……あ……あ……』




そして……



私は……




意識を失った。




ドサッ…



「…………今日も大人しくしてるんだよ……かなみ」




そう言い残し、クローリーは重い扉を開け、その部屋から出て行った。



この物語は、人間であるかなみがクローリー・ユースフォードに……狂った愛を受けるまでの物語である。
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