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□家畜でもいいから
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私の街にも……



とうとう吸血鬼がきた……




大丈夫……



家にいれば……



私一人くらいバレないはずだ……




私は台所へ行き、包丁を掴む。



こんなもので……吸血鬼に勝てるなんて思ってはないが……



ないよりはマシだ。


そして、リビングにある棚の中に隠れた。



ここに隠れて……ジッとしていれば……



バレるはずない……




親はウイルスで死んだ。



一人っ子だったために兄弟はいない。




それでも一人で……この家でひっそり生きてきたというのに……




なぜ今更吸血鬼が……




ガタッ……



ガンガンッ




『っ……』



玄関の扉を叩く音。



鍵を閉めてある……



諦めて帰って……




ガンっガンっ……



戸を叩く音が何度も聞こえ……そして……



シンとなる。




帰った?




そう思った時




ガシャーーーーーーーーーーーーン!!!!!!!




リビングの窓ガラスが割れる音がした。



『っ…………』




うそ……



入ってきた?



ザッ……ザッ……





窓ガラスを踏みつけながら歩いてくる足音が聞こえる。



体が震える。



お願いだから……



気付かないで……





「あれー…………なんか気配した気がしたんだけどなー……俺の気のせいかな?」




少し高めの声……


透き通った……綺麗な声だが……




絶対吸血鬼だ……




「んー…………帰るか」




その声にホッとする。





ガラッ……





「なーんて!……ほんと人間は馬鹿だなぁ……気付かないわけないだろ?」




扉を開けたのは……



薄紫色の髪を後ろに束ねた……


目は赤くて……


牙がチラリと見える……



『い……や……こな……来ないで……』



「大人しく出て来なよー」



顔を近づけてくる吸血鬼に……



思わず……



『いやぁぁあ!!!!』




ザッ…………




私は持っていた包丁を振り上げた。
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