short(旧)

□◉僕だけに
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「官能的な声……ねぇ」



『ふ、フェリドが適当なこと言っただけ!!信じないで……よっ……』



大声を出したことで余計くらくらする。



床に両手をつき、必死に意識を保とうとした。



「あはは、なんか……僕に跪いてるみたい」



『な……っ……』



その瞬間、髪を掴まれ……



上を向かされる。



「てか……何フェリド君に吸われてるの?」



私を冷たく睨みつけるクローリー。



「前も言ったよね?フェリド君に次……吸われるようなことしたら……」



クローリーは、あろうことか剣を抜く。




『え…………』




そして、その剣は私の手の甲に突き刺された。



『っ…………』




吸血鬼が傷の治りが早いとはいえ……


痛みはもちろん感じる。




手の甲から血が溢れ出した。



そしてすぐに剣を引き抜き




「君の血は……僕だけのものだろ?」



手をとり、甲にキスするように血を吸い上げる。




『っ……やめ……もう……血が……』




「知らないよ。君がフェリド君に吸わせるのが悪い。……僕はいつも通り君の血を吸うだけだ」



再び手の甲に口付けする。



溢れ出す血は……



クローリーによって綺麗に啜られた。



『……もう……だめ……』




前に倒れそうになれば……



クローリーは屈んで私を受け止める。



「なんだ……首から吸って欲しかったの?」



倒れ込んだ時、丁度首筋にクローリーの牙が近くなっていた。




『違う……もう……やめ……』



「煽られちゃったら仕方ないよね。フェリド君も言ってたし」




クローリーはどうやら、フェリドのことをかなり根にもっているようだった。



もう……諦めよう。



そう思ったとき、首筋に牙が突き刺さった。




ちゅーっと高い吸血音が響く。



『……っ…………っ……』




目の前が白くなってくる……



「……我慢してる君も可愛い。……僕だけに血を吸わせてたら……こんなことにならなかったのにね」




再び肩に牙が刺さる。



あぁ……クローリーは……



私に意識を保たせる気はないのか……



私はそのまま……



クローリーに抱き締められる形で気を失った。







「…………全く。……まだまだ躾がなってなかったみたいだね」



クローリーは、肩にのってるカナミの頭を優しく撫でる。



「君も……君の血も……全て僕だけのものだ……。誰にも渡さない」


グッとカナミの頭を、自分の方に押し付ける。




「カナミは……僕だけに……血を差し出せ……」




『ん……』



苦しそうな声を上げるカナミ。




僕だけに……






ね。







(END)
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