short(旧)

□◉好奇心
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「吸血鬼の血って美味しいのかなぁ」


都市防衛隊の同僚、ラクス・ウェルトはふと思いついたように言った。




『……は?』



剣の手入れをしていた私は手を止め、彼を見る。




「ん?いや……ただの好奇心だよ。人間の血は美味しくて、吸っていたらすごく気持ちよくなって…。吸血鬼の血はそうなるのかなぁって」



可愛らしく目をパチパチとさせ、こちらを向く彼に


『何故それを私に言う』



「えー……君なら飲ませてくれるかなぁって」



『はぁ!?なんでよ!?』



「だって俺のこと好きだろ?」




キョトンとした顔をされて発された言葉に、私は全身の熱を感じた。




『なっ……何言って!』



「え?嫌いなの?」




嫌いじゃない。


むしろ好きだ。



同僚である彼の強さは、尊敬に値するし…
彼が戦っている様子を見ていて、ホゥと魅入ってしまったことだってある。



『嫌いだ』


「嘘ばっかりー」


『嘘じゃないっ……』




顔が赤くなっていないだろうか。



今すぐにでも冷えた手で自分の顔を覆いたい。



「ふーん……ま、飲ませてくれないんだね」



つまらなさそうに笑った。



でも……



私にだって好奇心があった。




ラクスはいつも、人間の血を吸うときは夢中になって食らいつくように吸い尽くす。



制限ができないといったように



そんな吸血を見ていて



彼に吸ってもらったら……どうなるのだろうと……



死にたいわけじゃない……




でも彼に……


あれほど夢中になって吸われるなんて……



人間は家畜のくせに、贅沢だ。



なんて思うことが……あった。




『っ……ラクス』



「なに?カナミ」




私は自分の服を引っ張り、肩を出した。




『飲みたきゃ飲んでみたら?』
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