愛し君へ

□キラキラ
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とある日の昼休み。


「そらあかんやろ!」


『そ…そら、あかんやろ!』


「惜しいなぁ、イントネーションがちゃうねん。」


関西生活も少し慣れ始めた暑い夏の日、約束通りあたしは白石くんに作ってもらった関西弁ドリルを片手に関西弁講座を定期的に開催してもらっているお陰で何となく皆の話していることが理解できるようになってきた。本当に奥が深い…完璧にマスターできる日はくるのだろうか?
必死に関西弁を話そうとするあたしがツボらしく、教えてもらいながらクスクスと笑われる。今日は謙也くん、一氏くん、小春ちゃんを始めテニス部メンバーと屋上で過ごしていた。


『難しいなー。…にしても、白石くん笑いすぎ!』


「なんやの蔵りん、ラブラブっぷりを見せつけてー!うちらだって負けへんわよー!!ねぇユウくん♡」


「せや!にしてもあおい、関西弁が不自然すぎやわ(笑)」


『それは自分でも重々承知しております…仕方ないでしょまだ関西歴浅いんだからー!』


「ええやん!俺はあおいのねーちゃんが関西弁好きになってくれるんなら嬉しいでー♪」


金ちゃん、あなたはなんて可愛いの?天使なの?白石くんからごんたくれなんて呼ばれてるけど、あたしにとっては可愛すぎる弟みたいだよ。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。暑い夏のプール授業、皆で集まる昼休み。
夏祭りが開催されていて白石くんと浴衣で回っていると、歩く度に女の子からキャーキャー言われている姿を見て改めてモテるんだなぁと実感する。当の本人はそういうの苦手みたいだから安心しているんだけどね?
アクセサリーを売っている露店を見つけ眺めていると、向日葵をモチーフにした華奢な指輪を見つけ子どものように食い入って眺めていた。


『あたしの名前ってね』


「ん?」


『真っ直ぐ太陽に向かって伸びていく向日葵のように大きくなりますようにっていう意味でつけられたんだって。だから向日葵を見ると何だか勝手に親近感わいちゃうの。』


「そっか、いい名前やもんな。それ、欲しいんか?」


『へっ…?』


すっとあたしの手からすり抜けた指輪は、白石くんが"おっちゃんこれ下さい"だなんてあまりにスマートに買ってくれたものだからあたしが間に入る余裕もなく。


「ちょっとだけ早い、俺からの誕生日プレゼント。」


君があまりにキラキラした目で見ていたから、喜ぶ顔が見たくなったんや。俺が目当ての物を買うと大きな目を更に大きくして驚いているそんな仕草が可愛くて。そのまま人気のないところへ君を引っ張って行って、どうしてもやりたいことがあった。


『白石くん…悪いよそんな高いの!』


「ええから、手ぇかして?」


まるでサイズを測っていたかのようにぴったりと薬指にはまる指輪は、永遠を誓いあう証のようで。嬉しくて、顔が真っ赤になっていると思う。それと同時にこの時間が永遠に続いて欲しいと願うあまり涙がこぼれたんだ。
壊れ物を扱うようにぎゅっと抱き締めてくれる白石くんの体温が心地いい。


「左手の方は、俺が大人になるまでとっておいてや?」


『それって…』


「俺からのプロポーズ。…俺じゃあかん?」


さらっとそんなことを言ってのける白石くんの気持ちが嬉しくて、涙は止まることを知らず次々と溢れてくる。



『白石くんとずっと一緒にいたい。』


「おおきに。好きじゃ収まらんわ、愛しとるで、あおい。」


いつまであたしはあなたの傍にいられるかな?できることなら、お爺ちゃんお婆ちゃんになってもこうして二人並んで歩きたい。永遠なんて儚い約束だけど、貴方となら叶えられる気がしたんだ。
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