愛し君へ

□告白
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あたしには両親がいない。いや、いなくなったというべきか。お母さんは若くしてあたしを産み、両親と親子三人仲良く暮らしていた。あたしが小学校の頃にお父さんは会社を立ちあげてそれが軌道に乗り、裕福な暮らしをさせてもらっていた。やりたいことは全てやらせてくれて、欲しいものは全て買い与えてくれた。





円満な家庭、自慢の両親だった。





幸せがずっと続くと思っていたのに、両親はあたしの目の前で殺された。歩道を歩いていたはずだったのに、飲酒運転の車にはねられた。お父さんもお母さんもとっさにあたしを庇ってくれたお陰であたしは軽傷で済んだんだ。未だにあの時の光景は忘れない、いや一生忘れられないだろう。
近くに身寄りもなく途方に暮れていたあたしに優しく声をかけてくれたのは、大阪に住む母方の祖母だった。両親が一度にいなくなったショックは図り知れず、心ないことに学校では様々な噂も飛び交った。
すっかり塞ぎ込んでしまい暗くなった私の変化をみてなのか、親が自殺したらしいとか、殺されたらしいとか…噂は怖い。尾ひれがついた噂が一人歩きしてあたしは可哀想な子だというレッテルを貼られた。味方でいてくれる友達も多かったけれど、陰口は日常茶飯事だった。精神的ダメージは大きく、中学生での一人暮らしは難しいからとしばらくおばあちゃんが来てくれていたが心機一転転校してはどうかというおばあちゃんの提案に乗ったんだ。
住み慣れた土地を離れるのは寂しかったけれど、辛い思い出に塗り替えられた土地に居続けるのは苦しかった。


誰も知り合いのいない土地で1からのスタート。いつかこの心の傷は癒えるのだろうか?どうしてあたしの家族がこうなってしまったんだろう、毎日毎日…考えるのはそのことばかり。ねぇ、あたしの家族を返してよ…願っても願っても叶わないことは知っている。けれども願わなければやっていけないほど、あたしの心は深く傷ついていた。
そんな過去もあったため周りの皆には嘘をついていた。このことは誰にも話したくないんだ、話すと今は余計に辛くなってしまうし同じことは繰り返したくないから。とりあえず…何事もなく中学校生活が送れますように。
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