愛し君へ

□キラキラ
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暑い暑い夏の日、ただ今夏休み真っ只中。お盆の季節がやってきて、懐かしい…けど悲しい思い出が沢山詰まった土地へおばあちゃんとお墓参りに来ていた。そして白石くんも一緒だったりする。どうしてかって?おばあちゃんの粋な計らいってやつ??


"蔵ノ介くんがいてくれはるとこの子安心するみたいやから、良かったらついてきたってや?ほら、小旅行やと思って♪"



…なんてこと言われたら優しい白石くんは二つ返事で一緒に来てくれた。あたしに負けず劣らず白石くんを気に入っているおばあちゃんはどこから出したのか、へそくりで白石くんの分も旅費を出してくれてこの旅行が成立した。
あたしの故郷は空港から電車で二時間半、そこからバスを乗り継いでやっと到着する。田園風景が広がり虫の鳴き声が響いている。山は緑で青々とし、太陽の光を受けてキラキラとしている。森林浴という言葉そのままの大自然が広がっていた。女二人と自分の荷物を持ってくれている白石くんはあまりのど田舎に驚いていた。



『凄い田舎でしょう?本当に何もないところなの。』



「ええところやなーと思ってきょろきょろしてもうたわ。ここがあおいの育った場所なんやと思うと一緒につれて来てもらえてほんまに嬉しいなぁ。」



久々に帰る故郷は変わらなかった。駅から道なりに歩いて薬屋さんの角を曲がった先にある家があたしの実家。今は誰も住んでいない、あたしが大阪へ旅立った日のままの家。



「おばあちゃんちょっと片付けしとるから、久々に散歩でもしてき?蔵ノ介くんもほら、せっかく北海道来たんやし。」



『うん…分かった。案内するね、白石くん。』



「よっしゃ、外にあるのあおいが使てた自転車?借りてってええ?」



『うん、大丈夫だよ?』



「いつもみたいに、後ろに乗ってな。」



『本当だね、いつもと同じ。ありがとう白石くん、こんな遠くまで一緒に来てくれて…』



「俺はあおいと一緒にいられるならどこへでも行くわ!それに…辛いよな。」



『一人じゃきっと行けなかったと思う…事故があったところ。おばあちゃんもきっと一人になりたかったのかな?見送る時に涙ぐんでたから。白石くん、あたしのお父さんとお母さんに一緒に会いに来てくれる?』



「もちろんや。お供え物と花買って行かないとな。」



近くにあるコンビニで季節もののコーナーにお花とお供え物があったため購入して目的地へ向かう。快晴の空、夏の匂いがするそよ風、白石くんと一緒だと周りの景色をみる余裕ができたんだ。この背中にしがみついているだけでこんなにも安心できるのは、貴方からの愛情の深さを知っているからなの。



目的地へ到着すると、すでにそこには人の姿があった。



『…優ちゃん…』



「あおいちゃん…帰ってたんだ。」



そこにいたのはあたしをどん底まで落とした張本人だった。よりによって一番会いたくない人に会ってしまった。



「隣にいるのは…見たことない子だね。お友達?」



戸惑い口をつぐんでいるあたしを見た白石くんがあたしの前へ立ってくれた。



「初めまして、白石蔵ノ介いいます。あおいの彼氏で、あおいのご家族の計らいで一緒に旅行っちゅー名目やけど、ご両親の墓参りさせてもろてます。君はあおいのお友達?」



「随分とイケメンな彼氏さんだね。羨ましいよ。そうです、元々同じクラスでした。…私本当にひどいことしたと思ってる…ごめんなさい。謝って済むことじゃないけど…せめて償えたらと思って毎日お参りしてたんだ。」



『…優ちゃん…』


そう。私の両親は事故死だったが、自殺や他殺といった間違えた噂を流し、私のせいで両親は死んでしまったなどと根も葉もない噂を流したのは優ちゃんだった。
自分が好きだった男の子が私と仲良くしているのを見て面白くなかったからと引越しの時に面と向かって言われ、それっきりになっていた。



「今は地元離れてるんでしょ?私がお参り欠かさないから…安心してよね。」



『ありがとう。』



そう言って優ちゃんは去っていった。取り残されたあたし達は事故現場にお供え物を置いてお参りをし、目的を果たした。



「あおいのご両親はどんな人だったん?」



『お父さんはね、強くて優しくてあたし1度も怒られたことなかったの。お母さんにはその分叱られること多かったけど、本当は凄く優しくて。料理が上手で誰からも慕われてる太陽みたいに明るい人だった。』



「そうか。自慢の両親だったんやな。」



『うん。…二人とも大好きだった…もっと一緒にいたかった…』



「…うん。」



その場にしゃがみこむ彼女の背中は小さく震えていて、アスファルトにはポツポツと黒く染みが広がっていく。
俺にはその背中を抱き締めることしかできんくて、大丈夫…そう言いながらひたすら頭を撫でて側におった。
思った以上に彼女の心の傷は深くて、普段は無理しとったんやろうな。弱い部分を俺に見せてくれたことが嬉しくもあった。あおいのお父さんには及ばんかもしれへんけど、俺が君を守るから。何があっても…守るから。
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