FINAL FANTASY 6

□絵画の君
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あれ、と声を発したのはマッシュだ。

「なんで、こんなとこにセリスの絵があるんだ?」
「えっ!? 私?」

ジドールの大豪邸の薄暗い地下室は、とにかく不気味な様相を呈していた。
魔物はひしめいているわ、壁掛けの絵に引きずり込まれるわ。
今は足元に転がる宝箱も、つい先ほどまではよくわからない仕掛けで宙に浮いていた。
おまけに広い邸内は複雑な構造をしており、どこまで行けば何があるのやら。
長居は無用、と先を急いでいた一行のうち、マッシュだけが外れて一枚の絵をまじまじと眺めていた。
その後ろ姿を、セリスは遠巻きに見つめる。
彼の身が心配ではあるが、不用意に近づいて、例えば二人まとめてキャンバスの中に捕らえられては厄介だ。

「ちょっと……あんまり無闇に近づかないほうがいいわよ」
「いや、大丈夫だよ。この絵からは変な感じがしない」
「どんな嗅覚してんだ」

お前は鋭敏な野性動物か、とセッツァーが呆れ顔で呟いた。
ダンカンの元に身を寄せていたマッシュは、修業や食料の調達のために度々コルツ山に入山していた経験がある。
雄大な自然の中でそういった動物的な直感が養われたのだと言えば、ある意味その例えは間違っていないのだが。
ともかく、実際にマッシュが近寄っても、特段の変化は起こらなかった。
どうやら本当にただの絵画のようだ。
恐る恐る、セリスやエドガーも壁際に歩み寄る。
そんな彼女と絵とを見比べて、マッシュはどこか嬉しそうに言った。

「な、似てるだろ」

薄暗い中で目を凝らすと、たしかに、そこに描かれているのはセリスに瓜二つの女性だった。
一つに束ねられた艶のある金糸のような髪、憂いを帯びて微笑む横顔、清楚ながらも華やかな白いドレス。
どこかで見覚えがあるが、これは。

「いや……こいつは違うな。マリアだろ」
「それって、オペラの?」

オペラ座の看板女優マリア。
その名を持ち出したのは他でもない、彼女を狙っていた男だった。
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