Fate/Zero
□聞こえた言葉
1ページ/2ページ
「桜ちゃん、はい。お誕生日おめでとう」
いつものように会った公園で雁夜が差し出したのは、平たいけれど幼い桜には大きな包み。両手を広げて受け取れば、かさかさと紙の擦れる音がした。
「まあ、よかったわね。桜、何て言うの?」
「ありがとう、カリヤおじさん」
母親に促され、感謝の言葉を口にした。くすぐったそうに笑う雁夜を見上げる。
「ははは、どういたしまして」
背の高い彼の顔は、その後ろの空に登った太陽に重なって眩しく、陰になって少し見難かった。が、その優しい表情ははっきり目に見えずとも、ひしひしと伝わってくる。それは桜だけが鋭敏に感じ取ることができるのか、誰もが知る雁夜の人間性によるものなのか。今の桜にはわからないし、考えもしなかった。
「わ、桜いいな! ねえ、なにが入ってるのかな」
自分がもらったわけではないのに盛り上がる凛。この場に父親がいたら「優雅たれ」と見咎めるであろうが、年端も行かない子どもたちにとって、可愛らしい包装紙と花を模したリボンで装飾されたプレゼントにはそれ相応の魅力があるものだ。
「おじさん、あけてみてもいい?」
「ああ、どうぞ」
凛より少し控えめな反応を示す当事者の桜だが、雁夜の返事にぱあっと瞳が輝き、急いで近くのベンチに包みを置いて開封に取りかかった。