短編

□宮地と二人きり
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暗い渡り廊下を私と幼馴染みは駆けている。足を止めたら確実に奴ら、ゾンビの餌食だ。幸いにもゾンビ二匹はそんなに足は速くないようで追いつかれることはない。というのも手を引いてくれるキヨのお陰だ。私一人ではアウトだった。ちょっと申し訳なく思う。
追いつかれる事もなく、かと言って銃を構える余裕もなく渡り廊下の先にあった鉄格子の扉の前へと辿り着いた。他に逃げ場はない。そう思ったキヨは迷わずその中へと飛び込んだ。
鉄格子の中はプールである。そのまま奥へと走り出そうとしたら、がしゃん、と変な音がした。そちらを見れば、扉に大きな錠前が掛けられていた。
閉じ込められた?
ゾンビは鍵を掛け終えると去っていった。

「もしかして、仕組まれた?」
「……。あークソッ、あいつら轢く!」
「是非そうして欲しい」

今回ばかりはキヨの物騒な発言に賛同して、取り敢えず錠前に近付こうとした。しかし、足に何かが絡んで動けない。そちらを見たら、黒くて細い何かの束が大量に絡んでいた。
何これ。そう思う間もなかった。
黒い何かに足を引かれる。引き込まれた先はプールの中。咄嗟に水を飲まないように息を止めた。目に入ったのは、女性。下半身は蛇だが。足に絡まるものは女の異様に長い髪である。
磯女!?
妖怪の出現に驚くと同時に水を掻いた。息が出来ない。何とか水面に顔を出そうとするも足を引く力が強過ぎた。不味い、苦しい。意識飛びそう。
そう思った瞬間、突然足に絡まる髪が解け落ちた。そのままぐっと力強い腕に抱えられて水面へと顔を出す。

「…っ!ゴホッ、…ハァ」
「大丈夫か、姉ちゃん」
「…ん、ありがと」

プールの縁へと誘導されると壁に凭れた。噎せた私の背をキヨが擦ってくれる。本当に怖かった。
それを忘れようと一旦大きく深呼吸をした。気を取り直すとプールの底を蹴って水から上がる。プールサイドに立つと濡れて重くなったスカートを絞った。
磯女っぽいものは頭にナイフを刺したままプールに浮かんでいた。血が流れているそれは見たいものでもなく目を逸らした。
スカートは絞っても重かった。短パン穿いてるわけだし、いっそ脱ごうか。一緒にいるのも幼馴染みだし、いいか。そう思うとスカートを脱いだ。

「姉ちゃん、貸せ」
「ありがと」

いつの間にかTシャツを脱いで絞っていたらしいキヨに重くなったロングスカートを渡した。プール側に向かって絞るキヨに顎で向こうを示されてそちらを見れば、キヨのジャージが放ってあった。飛び込む前に脱いだのだろう。なるべく濡らさないように気をつけながらそれを回収した。

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