Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,2
26ページ/65ページ



地に伏せて隙間からシャッター方面を狙う私に、木の上から声が掛けられた。

「みのり」
「ん?」
「大丈夫か?」
「平気だって。動かない予定の作戦だし、集中力に疲れは影響しないタイプだし」

私が提案した作戦はこうだ。
赤司くんにゾンビの格好をさせて情報を集めてもらう。ついでにマコちゃんに情報を伝える。そして、そのまま陽動の任を担ってもらった。
マコちゃんの方へ行くのは赤司くんの格好的に難しい。マコちゃんなら一瞬で気付くから、仲間を止めてくれるまでの辛抱ではある。ただ、弾を避けて動くのは頭も運動能力も使う。だから、出来ればでいいと赤司くんには言った。銃を握っている人が精密性の高い人なら良いんだけど、とボヤいたら、赤司くんは頷いてくれた。

「十分可能です」

余裕の表情であったから任せた。生憎シャッターの辺りは見えないが、赤司くんが辿り着く前に銃声が止まったから大丈夫であろう。

私とちーちゃんは私が倒れていた所からそう遠くない位置で待機している。ここならばゾンビに肉眼で確認される事はないだろう。寄ってこられるのは嫌であるが、特殊ゾンビの御一行はみんなシャッターの方に注目しそこから動かないから大丈夫だ。勿論声も届かないから喋り放題である。小声だけど。

本当はもう少し近付く予定だった。しかしそれは私の残った体力を理由に赤司くんに反対された。見つかった場合の事を考えての事だ。だから、見つかっても寄り切られる前に倒せるこの位置に着いた。木々が邪魔で撃ち辛いが、何とか下から狙えるからいい。ちーちゃんは木箱の上に立って、前にある木を敵からの目隠しと、腕置き代わりにしている。長身だから成せる技だ。あそこ撃ちやすそうでいいな。

こちらは、赤司くんの合図で見えるゾンビを倒す役。そう簡単に場所がバレないスナイパーによる陽動だ。駆け寄る場所も分からないし、シャッター方面には敵がいるしで戸惑う事を狙っている。
そこからは考えてない。多分マコちゃんが何とかしてくれるから。余計な事を考えると邪魔になるだろう。こちらは仕留める事に集中する。それだけでいい事にする。

「何体見える?」
「5,6…7だな。そっちは?」
「手前の3体のみ。多分赤司くんがアレやってくれれば右方の2体は見えそう」
「出来るだけ奥狙ってくれ。俺では当たらない」
「え。私も奥の奴くらい離れてると首狙うとか辛いんだけどね」

当たらない、というのは、首には、という枕詞が付く。普通に足なら当てるだろうが、一撃で仕留めたいため、ちーちゃんも私も首狙いで行くつもりだ。
こんなに離れて狙う事はサバゲーではあり得なかった。ここに来て初めてだ。改造ガンなんて使った事なかったし。当てるだけならまだしも、ジャケットとヘルメットの間という狭い箇所に、というのは難しい。

「ま、やってみましょうか」

外してもなんとかしてくれる人がたくさんいる。だから、チャレンジしてみよう。
スコープに赤司くんが映った。彼はこちらに向かってこっそりと手を振って見せてから、駆け出した。

●●
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ