Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,2
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黛は赤司に頷いて駆け寄った。茂みの中に飛び込めばうつ伏せに倒れたみのりの横に膝をついた。みのりの横には彼女が愛用するドラグノフと、敵から奪ったらしきAKが落ちている。服装が違うと思ったらゾンビの防弾ジャケットを身に付けていた。

その背に手を置く。浅いような気はするが呼吸はしているようだ。ほっと息を吐いてからみのりの身体をひっくり返し、仰向けにした。見た感じ致命傷も無さげ。首回りの血が気になったが、確認したら本人の物ではないようだ。大方これを着てたはずのゾンビだろう。
黛がそう判断した辺りで赤司が側にしゃがむ。周囲を見回してゾンビを確認していたようだ。
寝ているのか、意識を失っているのか、目を開けないみのりの腕を取って脈を測る。

「ちょっと早いです。体温は高い位なので体力的なもので倒れていたのでしょう。もしかしたら頭を打ってこうなった可能性も無くはないので、あまり動かさないようにして下さい」

赤司の判断に黛は頷いた。今更赤司に対して何でみのりの平熱やら平素の脈やらと比べられるのか、とは、黛は少しくらいしか思わない。
こうして小声であるが赤司が喋るのだからゾンビの姿は周りに無いのだろう。黛も口を開く。

「起こすか? 流石に抱えてバレないように動くのは辛い」
「そうですね。花宮さん達を待つにしても、一度起こしてみるのが良いでしょう」

ここもいつゾンビが通り掛かるか分からない。動かない物を守るのは難しい。戦力にならなくとも、本人の意思で隠れてくれれば非常に楽になる。ここに留まることになったとしても、赤司と黛、二人が手を開けているのと、片方がみのりのフォローに回らざるを得ない状況では違う。

「みのり、みのり。大丈夫か」

黛は頭を揺らさぬよう、肩を軽く叩いて呼び掛けた。何度か続けるとみのりは目をゆっくりと開けた。

「頭打ちました?」
「……。いや、大丈夫。疲れたところで転けて落ちてた」
「そりゃあ、総重量10kgオーバーか? それだけあれば疲れる」

長物二本持ってサブマシンガンひとつで10kg程度。それに予備のマガジンやらなにやらの入ったショルダーバッグと、防弾ジャケットがどれ程なのか。男でも疲れる。それだけ持ってゾンビを避けつつ、ここまで来たんだ。倒れるのも納得だ。

「痛い所はありますか?」
「背中。撃たれた所が痛い。埋まってないけど衝撃は殺しきれないから打撲っぽくなったかも」
「動けます?」
「それは大丈夫」

赤司が外傷について聞けば撃たれたと返ってきた。運良く全てジャケットに着弾したようであるが、改造ガンの威力は強かったようだ。

「で、誰が来てるの?」
「霧崎と洛山です」
「そっか。じゃあ後でショウちゃんにお礼言わなきゃ」

その言葉の真意は特に口にせず、みのりは立ち上がろうとする。

「大丈夫なのか」
「へーきだって。こっちも動きましょ。ね、赤司くん」

赤司ならみのりの考えを読むに難しくはない。今吉辺りの真似をして人の悪い笑みを浮かべたみのりに対して、赤司は苦笑した。

「そうですね。大丈夫そうなら、動きましょう」

黛はため息をひとつ吐いて、落ちているドラグノフを拾い彼女へと渡した。

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