Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,2
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花宮が角を曲がってすぐ、2,3歩進んだところで様相の違うゾンビが目に入った。10mとちょっと先に行ったところだ。辺りを見回しながらこちらに向かってきている。これが特殊ゾンビか。
みのりの情報からして陽動出来ていなかったらここにはいない。もっと一年棟に近付いているはずだ。しかし、こちらへ向かっているということはみのりの陽動が途切れたという事だろうか。

苦い顔をしつつ、花宮は目線で作戦開始を指示した。頷きが返るのを見て、バレないように更に先へと進む。この時誰も伴わない。花宮が一番にバレるのは避けたいところである。
背後では山崎と瀬戸、実渕が各々見通しが良さげな位置に隠れた。花宮が配置に着いて銃を構える。一拍置いて、葉山が茂みから飛び出した。この面子の中で速いのは葉山だ。足場の悪さは実渕も気掛かりだったが、心配を諸共せずに反対の壁方向へと走る。
当然特殊ゾンビは銃を構えてその先を葉山へと向ける。それが味噌だ。銃を構える姿勢というのは決まっている。余程の事がない限りは大体一緒だ。右手の人差し指がトリガーに掛かる。葉山へバレルを向けて追った結果、花宮には丁度良くその手元が見える。

花宮の銃の腕前はみのりが認めている。精密射撃で10mそこそこなら霧崎の誰よりも上手かった。それ以上ならスコープが欲しいところだが、今は必要ないくらい近付いている。特殊ゾンビまで距離はそれほど遠くない。
花宮は特殊ゾンビがトリガーを引くより早く、その右の手元に弾を撃ち込んだ。ゾンビの手元から血が噴き出す。指なんて小さな部位は飛んだであろう。人差し指の近くに命中したはずだ。これではゾンビが銃を撃つことは叶わない。
しかし、仕留められてもいない。手元を撃った花宮の方を向いたゾンビはそちらへと走り寄ろうとしたが、それも不発に終わる。ゾンビの首にナイフが突き立てられたからだ。そのナイフを刺したのは葉山である。
花宮の方を向けば葉山に背を向ける事になる。当然の結果だ。

初めに手を壊したのは、銃という武器を使わせない為だ。銃を使われるのはこちらにとって慣れないから危険である。みのりはその、慣れていないというのを危惧した。
だから、使えなくしてやった。そうすれば慣れも何もない。銃撃じゃなくなれば怪我をしない自信もそれぞれが持っている。簡単な事だ。
計画通りだ。花宮は右の口角をにやりと上げた。

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