Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,2
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近い位置には敵の姿はない。カズくんに確認すれば、彼の目に入る姿もないようである。さっとシャッターの前まで移動する。調べてみれば、シャッターというか防火扉だ。扉も付いているが、開けようとしてみても動かなかった。鍵というか、何らかの仕掛けがあるのだろうか。
あまりひとつ所に長居したくはない。もうひとつ、一年棟に通じる扉と逆位置にある扉のノブをゆっくり捻って押す。開いた。薄く開けた状態をキープしてカズくんを呼んだ。覗いて貰えば何もいないそうだ。扉を開けて先に行ってもらう。

そこは、一年棟と二年棟の間にある渡り廊下とほぼ変わらない状態だった。鉄格子に囲まれて外には出られない。見通しはいい。右に折れた先には大きな、おおよそ二階建てくらいの高さの建物がひとつある。扉を完全に閉めるとやっと声を出せる。

「なんだろ、あの建物」
「すっげー体育館ぽいよ」

ああ、そうだ。確かに体育館ってこれくらいだ。近付いてみると、鉄の重そうな扉に張り紙がしてあった。

《ボス戦》
《帝光中出身者のみ入室可》

もうボス戦?しかも帝光中のみ、か。色々引っ掛かる。

「みのりサン、そっちに行けるっぽい」

カズくんに呼ばれて示された方へと行ってみる。そこには体育館ぽい建物に沿うように階段が付いていた。カズくんに先導してもらって登る。
その先には扉がひとつ。慎重にカズくんに扉を開けてもらった。が、何があるわけでもない。テーブルとイスだけだ。だが、壁の一面、体育館側が全てガラス張りである。中を上から見ることが出来るようだ。ただ、今は体育館の中が真っ暗で殆ど何も見えない。

「カズくん、懐中電灯持ってなかった?」
「あるよー。ほい」
「ありがと」

受け取った懐中電灯で体育館内の入口を確認する。僅かに扉の金属が反射する。

「カズくん、下にあった入口って通じてるのあそこだよね」
「んー、そうっぽい」
「てことは、入ったらすぐ何か始まっちゃうかもね。すぐ来るのは危険かも」
「ルールとか、何やんのかとか何処かに書いてあんのかな。あるんなら見つけた方が良いよな」

前室が無いとなると探索で見つける形か、入った段階で教えられるかであろう。前者であった場合に備えて探索は重ねたい。
他の方向に光を向ければこちらも木箱やら壁やらが乱雑に並んでいるように思う。となると、ここでサバゲーをやらされるのか。殲滅戦か、フラグ戦か。はたまた別のルールか。これだけでも知っておくだけで戦略は大きく変わる。

「これ、ありがと」
「おー」

懐中電灯の光を消してカズくんに返した。まあ、これからやるのは探索で間違えはない。取り敢えず情報を纏めておこうと思う。
ショルダーバッグからメモを出した。確認した壁とおおよその距離書き込んでおく。

「うわ、よく距離とか分かるね」
「歩測と目測と計算で出るよ」
「暗算っしょ?ムリムリ」

慣れるとすぐ出来るんだけどね。後は、大木の位置と大まかな障害物の位置を書き込んだ。

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