Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,1
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一度眩しいくらいの白に包まれた。その明るさから一転、薄暗くなれば元の位置、階段を上がってきた所へ立っていた。足元の壁側にマコちゃんが座っている。

「平気?」
「ええ。そちらも、怪我はないようで」
「お陰様で」

マコちゃんに話し掛ければしれっと一言で流された。だが、大分痛いんだろうなと予想がつく。3発めり込んでたからね。
ふと怒りの声が耳に入る。

「てめえ、なんで裏切った!?」
「先輩!落ち着くっスよ!何があったんスか?」

視線を逸らす虹村くんと胸倉を掴む笠松くんがそこにいた。りょーたんが止めるも胸倉の手が離されることはない。

「私が頼んだの。虹村くんは悪くないからその手を離して」
「な!どういう意味だ」
「それは後で話す。今は…」

喧嘩をする二人から正面の少年へと視線を移す。彼は微笑んでいた。

「おめでとう、弓削みのり。さあ、そこからあの缶を見事に撃ち抜いてくれ!くれぐれもセミオートで。時間を掛けてくれても構わないよ」

少年の声を受けてその場にしゃがむ。片膝を立てた状態で身体がブレないように気をつける。一度マコちゃんに視線をやれば頷いてくれた。にっこり笑って見せてから構える。
射程はさっきのサバゲーで大体理解した。威力と速度も大丈夫。
スコープを覗いて息を吐く。みんなが静まり返った。ピタリと息を止めてから引き金を一度引く。

カンッ!

紐で天井から吊るされた缶が揺れている。一撃目だ。揺れを観察して、二撃目。三撃目。そのまま七弾まで全て当て切った。
指の震えはない。そのまま揺れる缶を読み切って八弾目。当たった。
よし、コレでこのゲームはクリアだ。ここからもう一度切り替える。油断するな。後二発。
鼻で息を吸って、口から吐く。心臓を落ち着かせてから一撃。

カンッ!

揺れが収まってきていた缶がまた強く揺れ始める。誰かがひゅっと息を飲む音が聞こえた。
お願い三つ、しっかりと頂戴しなきゃね。
小さく笑って最後の一撃を放つ。

「はい、終了。ゲームクリア。お願い三つね。後賞品だっけか?用意宜しく」

最後の一撃が見事に命中すれば、立ち上がってわざと軽く言ってのける。色んな方面から疑惑が向けられるが気にしない。気に、しない。うん。強くあれ、自分!
少年はこくりと頷いて笑う。

「おめでとう。用意するからこちらへ」

少年は1-3に当たる位置にある茶道室へと入っていった。マコちゃんに目をやれば立とうとしていた。慌てて手を貸す。

「行くぞ」

殆ど私の手など借りずに立ったマコちゃんは全員にそう促して茶道室へと歩んだ。

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