Hydrangea game
□Hydrangea game Stage,1
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職員室へ入ればまた視線を感じる。そんなに見なくとも何にもしないけどねえ。やれやれと思いながらもなるべく顔には出さずにいる。鈍感なフリって面倒臭いわ…。
ふと空腹を感じる。これだけ周りに警戒されて緊張を強いられていても腹は減るのかと思いながら、応接スペースで話し合いをしているショウちゃんやらマコちゃんに近付く。
「ねえねえ、君達」
「なんや?先輩」
「お腹減ったんだけど君達はどうよ?」
「みんな練習終わりやから腹減ってるんとちゃう?作ってくれるん?」
「んー。この人数分は厳しいな。40人分でほぼ食欲旺盛な運動部……。何人か手伝ってくれるなら作るけど」
みんな大きいからねえ。平均身長どのくらいだろう?そんな子たちの食欲が可愛いはずがない。イコール一人じゃ無理。
ショウちゃんはそれもそうや、と頷いてから自分の高校の方に目を向ける。
「ワシも腹減ったし作っといて。桜井!手伝ってくれへん」
「え…、はい!スミマセン!」
いや、なんで謝るの。嫌なの?近寄ってくるため嫌では無いのだろうが。
茶髪で細身の桜井くんが頭を下げたことに苦笑を漏らす。
「火神くんも料理得意ですよ」
「へー。……いつの間にそこにいたの?黒子くん」
「さっきです」
「…そっか。じゃあ、火神くんも手伝ってくれるかい?黒子くんは?」
「いいっすよ」
「ゆで卵なら負けません」
「プッ!じゃあ、ゆで卵担当宜しく」
「はい」
まあ、四人いれば大丈夫でしょう。ショウちゃんにそれで良いかと目を向ければ思案顔。
まあね、中学の先輩で高校入ってからメールのやり取りくらいしかしてなかったから私を疑うのもわかるけど、そんなに心配かね。《嘘つきは誰だ?》を指すものは私かもしれない、何かあるかもしれない。そうやって知り合いでも周りのために疑えるのは良いところですけどねえ。
「高尾くん!料理出来る?」
「普通っす。え、俺も?」
「ダメ?器用そうだからさ」
「良いけど、期待しないで欲しいな」
これで監視員が付いたことになるだろう。あとは、大柄な子が火神くん一人だと心配かな?そう思えば後ろから影が差す。
「みのりちん。フレンチトースト作ってくれるんでしょ?」
「あっくん。お菓子なかったの?」
「あったけど、フレンチトーストが食べたいなー」
「ふふ、そっか。じゃあ作ってあげるから一緒においで」
「わーい!室ちん、みのりちん良いってさー」
これで大柄な子、そして、私を強く疑う人が揃う。
これでどうだとショウちゃんに目を向ければ困った顔だが頷いてくれた。
「じゃあ、頼むわ」
「はーい。じゃー行こっか!」
この面子を伴って職員室から家庭科室と化す事務室へと移動した。
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