Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,1
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「フェアでないので疑う理由を伝えておきます」
「ん?うん」

別に覆せないだろうから言わなくても良いのに。そう思いつつも一応聞く事にする。リコたんの表情も固い。

「《嘘つきは誰だ?》こう書かれたメモが見つかりました。同時に、二階で起きた方の教室では必ず何かが見つかりました。しかし、貴方のいた教室では見つかっていません」

「ん、なるほどね。まあ、そんなところかと思ってたけど。疑いは残るだろうけど嘘ついてる自覚は無いし、あの教室で何かを拾ったりもしてない。起きてすぐ移動したし、一緒にいた高尾くんはホークアイだからそこら辺は安心して欲しいな」

《嘘つきは誰だ?》ねえ。まるで、裏切り者がいる、とでも言いたげな言葉だ。そして、知り合いが断トツで少ない、バスケという共通点もない私が疑われるに違いない言葉。
だからキヨの目付きが悪かった。マコちゃんも不機嫌そうだった。
信じてくれているのが分かって嬉しい。
赤司くんは思案顔で告げる。

「信用している、していないじゃなしに気になる点がひとつ」
「ん?」
「メモの筆跡です。三種類ありました。活字と、手書きが二種。活字が4枚、手書きが3枚。《嘘つきは誰だ?》のメモだけ手書きの中でも筆跡が違いました。丸文字なので多分女性の物です。桃井と相田さん、弓削さんの物とも違います」
「ふーん。そりゃまたメモも怪しいことで…」

私の字は丸文字とは程遠いからねえ。
しかし、筆跡が違っても疑う要素ではある。そのくらいでは私の容疑は晴れないであろう。かといって一人で何とかならないし。大人しくしてるのが吉、かな?

「分かった。あんまりうろちょろしない。誰かと、…なるべく三人以上で行動するわ」
「ありがとうございます。助かります」

三人なら一人を抑えて逃げることも私の力では出来ないであろう。だからこその提案だ。
話は終わりとみた赤司くんは校長室を出ていく。私も後を追おうとすれば、リコたんに袖を掴まれた。

「私はみのりさんを信用してるわ」
「…ありがとう。リコたん大好きー」

リコたんの強い眼差しを受けて目元を緩める。ぎゅっと同じくらいの背の、細い身体を抱き締めた。リコたんも同じ力で抱き返してくれる。
信じてくれる人の為に、誠実であろう。

「聞いてもいい?」
「んー。なあに?」
「腰の…これって…」
「リコたん」

だよねえ。見えないはずがないもの。そう思うとちょっと語気を強めて話し掛ける。リコたんは黙って話を聞く体勢になってくれた。

「昔、ね。ちょっと色々あったの」
「そう…」
「みんなには秘密、ね?」
「分かったわ」

抱き締めを解くと、職員室へ戻った。


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