Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,1
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声に顔を上げて階段の方を見てみれば伊月くんがいた。伊月くんはぽかんとした顔の後はっとして慌てて降りてくる。

「あ、すみません、なんかいきなり…」
「んーん。気にしないで。カッコいいよね、スピンコック。ランダルでしか出来ないけどね、重いから」

くるりと銃が回るのは見応えがあるからサバゲーフィールドでも一目置かれたりする。実際にゲームで使うのは辛いのだが。一発撃てば100発くらい帰ってきそうだし。
もう一度くるりと回してから銃を膝に置いた。

「伊月くんはデザートイーグルにするの?」

彼の手にあるのは黒いデザートイーグル。私のはシルバーだったりする。ハンドガンの中では大きくて重いし単発。使い辛いと、私は思うが。

「あ、はい。名前に惹かれるものがありまして」
「敬語要らないよー」
「そう?じゃあそうする」
「素直でよろしい。っと、名前?…あー、イーグル・アイだっけか?視野が広いとか」
「うん。みのりさんたちが職員室行くまでの話を聞いて気になって」

素直に敬語を取っ払い、尚且つそれでも丁寧に会話をする伊月くんは好感が持てる。少しはにかんで見せるとかあざとい。
と思っていれば、彼は少し俯きがちにボヤいた。

「やっぱり止めた方が良いかな?」
「どうして?」
「今吉さんにみのりさんからオススメはしないって言われたって聞いて」
「確かに言ったね」

相談があるらしい伊月くんに、取り敢えず隣の椅子を進めた。
デザートイーグルに限ったことではないが、ハンドガンの類いは基本単発だから外した時が怖い。フルオートで弾幕が張れる銃ならそれこそ薙ぐように撃てば適当でも当たる。ウィンチェスターのように一発ずつレバーアクションが必要なわけではないが、一発一発狙って撃たなければいけない銃は不利ではある。特に初心者は。
ただ、メイン武器を選ぶにおいて大切な事がひとつ。

「でもね、メインで使うなら気に入ったやつを使うのが一番だよ。ここじゃあ遊びではないんだけど、それでもぴんと来るのを使うのはいい事だと思う」

どんな銃にも良いところがある。それを使い切れるかは腕次第だが、運命を感じたなら大丈夫。笑顔でそう言い切れば伊月くんは頷いた。大丈夫そうだね。

「でも、たまーにジャムるから二本持ってくか、サブになんか持って行きなよ?」
「ジャム…?」
「弾詰まり」
「ああ。はい!…はっ!ジャムったからジャムを塗る!キタコレ!」
「やめてー。壊れるー」

ああ、日向くんが止めたのはこういうことか。よく回る頭だこと。ダジャレは冷えたが彼の可愛い面だと思って笑って突っ込んでおいたらキラキラした目で見られた。え、何?

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