Hydrangea game

□Hydrangea game Stage,1
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「お見事!上手く撃ち抜いたね。今度サバゲーご一緒したいわー」
「ありがとうございます」
「姉ちゃん…」

キヨに呆れられたが赤司くんは笑顔で応じてくれた。赤司くんマジ紳士。これで警戒を解いていないのだから優秀だ。もちろん私もキヨもまだ警戒している。根武谷くんは1組から新しい椅子を取ってきた。下の階で「銃要らない」と言われたがそういうことかとから笑いしつつ、5組へと向かう。5組の扉は僅かに開いている。先に行った諏佐くんと高尾くんは合流出来たようだ。
私たちも教室に向かう。みんなは知り合いだらけで会いたい人もいるだろうと先に入るように促した。案の定というか、中ではわいわいと再会を喜んでいた。
ただ、赤髪に長身のガタイの良さげな男の子が諏佐くんの手当てを受けている。大丈夫だろうか。

「…!みのりサンっ、後ろ!」

扉から中を見ていれば高尾くんに名を呼ばれた。その声に後ろを振り返れば迫るのは頭の半分が吹っ飛んだゾンビ。
ああ、不味い。間に合わない…。
そう思った瞬間に腕を引かれ、温かいモノに包まれた。
パンッ。
ひとつ音がしてドサッと倒れる音。音が軽いからハンドガン、もといキヨが撃ってくれたか、と考えると身体の力が抜ける。崩れ落ちそうだった私を抱き留めて支えてくれたのは腕を引いたその人だった。

「大丈夫ですか、お嬢さん」
「あ…。うん。ありがとう」

しっかり身体に力を入れ直して自分で立つ。彼は抱き締めは解いたが軽く手を添えて支えたままでいてくれる。見上げてみれば切れ長な瞳の、これまたイケメンだ。というか、今までイケメンにしか会ってないのだが、高校バスケ界はどうなっているのか。
そんな思考をしていれば、その彼に両手を両手で包まれた。
ん、何だコレ?

「ああ、こんなところで女神に会えるとは思わなかった!お嬢さん、良かったら連絡先を……」
「姉ちゃんに何やってんだ、森山ぁ!轢くぞ!」

あーうん。
キヨもドルオタで物騒で、大概残念なイケメンだと思っていたが、この子も違うタイプの残念なイケメンさんだ。そして、キヨ。蹴り飛ばさんで宜しい。
キヨの背中を軽くあやすようにポンポンと撫でてから、蹴り飛ばされて尻餅を付いている森山くんとやらの前に中腰になる。

「森山くん、でいいのかな?」
「……!はいっ、森山由孝です!」
「弓削みのりです。助けてくれてどうもありがとう」

笑顔でお礼を言えばポカンと見つめられ、ついでに頬が赤く染まっていた。小声で「女神……」と聞こえたが気にしないことにする。なんだ、慣れてるのかと思えばウブだな。可愛い。
そう考えていれば赤司くんが声を掛けてきた。

「取り敢えず一階に移動しましょう。また襲われる危険がありますので」

そう言われて頷いて応じると廊下を確認してから下へと降りた。

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